「公開延期」は、もはや必ずしも駄作を意味しない?

来月北米公開が予定されていた大作映画『ジュピター』の公開が、来年2月に延期になった。監督は、『マトリックス』のラナ&アンディ・ウォシャウスキー、主演はチャニング・テイタムとミラ・クニス。いかにも夏向きのSF娯楽大作だけに、7月という映画の繁盛期をあきらめ、暇な2月に移すという決断に、業界は眉をひそめた。
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ワーナー・ブラザースは、エフェクトの処理が間に合わないためと説明しているが、トレーラーへの反響が悪かっただけに、ほかにも理由はあるのではないかとの憶測も飛び交っている。
しかし、だからといって、この映画がコケるとは決まっていない。かつては、公開の延期はその映画に大きな問題があることを意味し、すなわち失敗を予言していた。しかし、ここ数年は、延期の結果、大ヒットした作品が、いくつも登場し、その常識は必ずしも正しくないと証明したのである。
一番の例は、昨年の『ワールド・ウォーZ』製作中からトラブルが報じられ、エンディングを撮り直すために公開が6ヵ月延期された同作品は、パラマウントに大損をもたらすものと見られていたが、結果的には全世界で5億4000万ドルの興収を上げた。主演兼プロデューサーのブラッド・ピットのキャリアで、最大のヒット作ともなっている。これを受けて、すぐに続編の企画にもゴーサインが出たほどだ。
やはり昨年公開の『華麗なるギャツビー』も、賞狙いの年末公開をあきらめ、大人向けのドラマにはふさわしくない5月に延期した。結果は大成功で、バズ・ラーマン監督のキャリアで最高の、世界興収3億5100万ドルを売り上げている。
同じように、4年前のマーティン・スコセッシ監督作『シャッター・アイランド』も4ヵ月半の延期の影響はなかった。また、本来は昨年末公開予定だったものの完成が間に合わず、先月のカンヌ映画祭でプレミアされたベネット・ミラー監督の『Foxcatcher(原題)』も、カンヌでの評判を見るかぎり、おそらく次のアワードシーズンで大健闘しそうな勢いを見せている。
だが、その一方では、2012年11月の公開予定が昨年2月になり、再び年末に延期された末、大コケで終わった『47RONIN』の例もある。“古い常識”は、まだまだ完全に間違った常識にはなっていないのだ。(文:猿渡由紀)