NEWS・加藤シゲアキ、事務所問題渦中の小説刊行に葛藤「今出していいのか、出すべきなのか」
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加藤シゲアキが24日、都内で行われた新刊小説『なれのはて』発売記念会見に出席。ライブで“すごい光景”を見たことを明かしたほか、旧ジャニーズ事務所問題についても言及した。
【写真】新作『なれのはて』を手にする加藤シゲアキ
本作は加藤の最新書き下ろし長編小説。物語のきっかけになるのは、終戦前夜に起きた日本最後の空襲といわれる秋田・土崎空襲。やるせない人間の業と向き合いつつ、力強く生き抜こうとする人びとの姿を、一枚の絵のミステリを通じて描く。
執筆で苦労した点を加藤は「たくさんの資料を読み込むうちに、史実を元にして小説を書くのは初めてでしたし、はたして事実として起きた空襲、被害者がいるものを物語にしていいのかという葛藤はずっとありました」と告白。その一方で「書くことで届くものもある」という気持ちもあったと話し、「なるべく史実を元に、遺族や被害者の方々の傷を抉らないように、いろいろなところに配慮しながら書くという部分が非常に苦労しました」と明かした。
ファンからの反応については「今NEWSはツアー中なんですけど、ライブでうちわではなく『小説現代』を持ってる人が何人かいて(笑)。すごい光景だな、と。文芸誌を振るので」と明かし、「『発売前重版』といううちわもありまして、喜んでくれてるんだなと思いました」と笑顔。プルーフを読んだ書店員からの反響も今までで一番多くあったと明かした。
また、身近な人からのリアクションを聞かれると「まだ発売してないので渡してはいなくて」と話し「小山(慶一郎)くんは『読ませろ』って言ってくれるんですけど、『買え』って言ってます(笑)」と告白。「一番身近な人間に一番買っていただきたいなと思うので『10冊買ってご家族に配ってください』と伝えてあります」と語った。
また、会見では故・ジャニー喜多川氏の性加害問題について、ひとりの表現者としてどのように向き合っていきたいかという質問も飛んだ。加藤は「被害者の方がいる話ですから、まず被害者に配慮しつつ、自分たちの会社で起きた問題なので、自分たちが一番組織や会社というものに厳しい目を向けるべきだなと思っています」とコメント。続けて「なぜ作家業としてこの会社にいる必要があるのか、と思われる方もいると思うんですけど、僕個人の現在の意見としては、内側から監視したい。内側からその組織を見つめたい」と考えを口にし「いつか執筆をする上で自分の中の大きなテーマになる可能性もありますし、おこがましいけれど、自浄作用の一端を担えればいいなと思います。現時点ではそういう思いです」と言葉にした。
改稿作業中にこの問題が取り上げられたとも振り返り「この小説は少しジャーナリズムみたいな部分もあったり、メディアの話にも関わってくるので、この小説を今出していいのか、出すべきなのか、というのはすごく葛藤しました」と吐露。「『この小説が間違っているかもしれない』という、自己批判的な厳しい視点で冒頭から丁寧に読み直したんですけど、結果的に、自分の感覚は間違っていないと信じたかったし、それだけの覚悟を持って書いたという自負がありました。どう捉えられるかという不安はありますけど、自分としては覚悟を持って書き上げた作品ですので、刊行しないという選択肢はないなという部分で刊行に至りました」と打ち明けた。
加藤シゲアキ著『なれのはて』は講談社より10月25日発売。