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『ブルーボーイ事件』は「今の時代に必要な映画」 飯塚花笑監督、当事者キャスティングの裏側を明かす

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映画『ブルーボーイ事件』第38回東京国際映画祭レッドカーペットの様子
映画『ブルーボーイ事件』第38回東京国際映画祭レッドカーペットの様子(C)2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会

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 「性別適合手術」が違法とされていた1960年代に実際に起きた事件に着想を得た映画『ブルーボーイ事件』(11月14日公開)。本作は第38回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に出品され、10月27日に行われたオープニングイベントで、主演・中川未悠、中村中、イズミ・セクシー、真田怜臣、六川裕史、泰平、飯塚花笑監督がレッドカーペットに登場。11月4日には中川、前原滉、イズミ・セクシー、安井順平、飯塚監督で作品の上映前に舞台あいさつを行った。

【写真】主演を務めた中川未悠

 1960年代後期、東京オリンピックや大阪万博で沸く、高度経済成長期の日本。国際化に向け売春の取り締まりを強化する中、性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けた通称ブルーボーイたちを一掃し街を浄化するため、検察は手術を行った医師を逮捕。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷した。

 東京の喫茶店で働く主人公・サチ(中川未悠)は、恋人の若村(前原滉)からプロポーズを受け、幸せを噛み締めていた。そんなある日、弁護士の狩野(錦戸亮)から証人として出廷してほしいと依頼を受ける。実はサチは、性別適合手術をしたことで裁判にかけられた赤城(山中崇)のもとで手術を受けた患者のひとりだった。サチは、かつての同僚・アー子(イズミ・セクシー)やメイ(中村中)、ブルーボーイの仲間・ベティ(真田怜臣)、ユキ(六川裕史)、ツカサ(泰平)と自分たちの尊厳をかけて裁判に向き合うことになる。

 10月27日、第38回東京国際映画祭のオープニングイベントで、『ブルーボーイ事件』で主人公・サチを演じた中川未悠、ブルーボーイ役を演じた中村中、イズミ・セクシー、真田怜臣、六川裕史、泰平、そして飯塚花笑監督がレッドカーペットに登場。1960年代の出来事を描いた作品ということで、キャストたちは昭和レトロなドレス姿。ドレスは作品の衣装部がそれぞれのキャラクターをイメージしてアレンジしたもので、作品の世界観をアピールしながらオープニングイベントを華やかに彩った。

 そして11月4日、同映画祭で上映前舞台あいさつを実施。飯塚監督、中川、前原、イズミ・セクシー、安井が登壇した。

 満員御礼で迎えたこの日。トランスジェンダー男性当事者として幼少期から“ブルーボーイ事件”を知っていたという飯塚監督は「1960年代当時の裁判にトランスジェンダーの方々が当事者として出廷し、自分の存在をオープンに証言していた事を知って衝撃を受けました。LGBTQ+の歴史は語られて来なかったので、歴史に埋もれさせるのではなく、映画を通して世に届けるべきなのではないかと思った」と映画化に至る経緯を述べた。

 主人公・サチを演じた中川とサチの元同僚アー子役のイズミは、オーディションで大抜てき。中川は「芝居経験がないので『なぜ私なんやろう!?』とビックリして不思議さもあったけれど、“オーディション合格”の文字を見た時に心から嬉しかった。作品に携われて良かったと思っています」としみじみ。

 一方イズミは「オーディションの知らせを受けた時に、なんだか私がやるような気がすると思った。合格した時は嬉しかったけれど、演技経験がないので『私で良いのか?』と手を挙げた事に対する後悔も入り混じる複雑な感情でした」と率直な心境を明かした。

 当事者キャスティングを掲げてオーディションを開催した飯塚監督は「前代未聞の事なのでどれくらいの人数が集まるのか未知の状態だった。結果的に40人程度がエントリーしてくれた」と述懐。イズミはSNSでの一人芝居動画を見て心を動かされたといい、中川については「裁判の証言シーンを演じてもらった際に、中川さん自身の経験がサチのセリフに想いとして乗っている様を見て、そのセンスにビックリ。これは当事者キャスティングでしか出来ない事だと思った」と振り返った。

 サチの恋人・若村役の前原は、中川とイズミの“なりきりぶり”を絶賛。「僕自身キャラクターを作ることはほぼなくて、というのも中川さんがサチとしてその場に存在してくれたから。僕は若村としてサチさんを愛する事だけでした。それは中川さんが作ってくれたこと」と感謝。

 サチ達を尋問する検事・時田役の安川は「ブルーボーイたちの心を駆逐するために罵詈雑言を浴びせかける検事役で、聞くに堪えないようなセリフもあります」と役柄を説明。そして「ただ撮影前に中村中さん、中川さん、イズミさんらとお食事をしてLGBTQ+当事者としてのお話しを聞くことが出来た。そんなコミュニケーションを通して役者としては敵ではないと理解していただいた。ちなみに時田もただのヒールではなくて、その時の彼の矜持もあるわけです。それが映画でもわかるように描かれています。そこにも注目してほしい」と力を込めた。

 最後に中川は「幸せとは何かを問いかけてくれる温かいストーリーです。幸せになる権利は誰もが持っていて、性別問わず一人一人その形・カラーは違います。色々な方が共感していただける、登場人物一人一人の思いが沢山詰まった心温まる映画です」とアピール。

 飯塚監督も「今の時代に必要な映画だと思って走り始めて今に至ります。映画をご覧になっていただければ、その意味が皆さんに伝わるのではないかと思います。1960年代の話ですが、今現在はどういった時代なのか?そこに想いを馳せていただければ、より意義深い映画になるのではないかと思います」と語りかけた。

 映画『ブルーボーイ事件』は、11月14日より全国公開。

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