河瀬直美監督最新作『たしかにあった幻』揺れる心を映し出す予告編&場面写真解禁
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ヴィッキー・クリープスが主演を務め、寛一郎、尾野真千子らが共演する河瀬直美監督最新作『たしかにあった幻』より、予告編と場面写真10点が解禁された。
【動画】揺れる心が交差する『たしかにあった幻』予告編
本作は“愛のかたち”と“命のつながり”をモチーフに、日本の失踪者と心臓移植の現実を重ねて描く、時を超えて運命が交差する珠玉の人間ドラマ。
主人公コリーを演じたのは、『ファントム・スレッド』(2017)、『蜘蛛の巣を払う女』(2018)などで知られるルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープス。コリーが屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅には、『爆弾』『そこにきみはいて』(2025)など公開作が相次ぎ、連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)にも出演中の寛一郎。さらに、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏ら、実力派キャストが顔を揃えた。
予告編は、「日本では年間約8万人もの人が行方不明になっている」「日本は先進国の中でドナー数が最下位である」という言葉と共に、フランスから来日し神戸の臓器移植医療センターで働く主人公コリーが、屋久島で迅(寛一郎)と運命的に出会うシーンや、コーディネーターとして臓器移植への理解と移植手術の普及に尽力する姿が映し出されるところから始まる。
「命の終わりより、(その先に)どう生かすべきかを考えるべきでは?」と訴えかけるコリーだが、西欧とは異なる死生観や倫理観の壁は厚く、医療現場の体制改善や意識改革は容易ではない。孤独と無力感に苛まれながらも、迅との日々が彼女の心を支えていた。しかしある日、迅は突然姿を消してしまう――。
「彼の家族も、迅さんのことを探している」。最愛の息子を亡くし、一周忌を迎えた今も罪悪感に囚われるめぐみ(尾野真千子)と、元刑事の亮二(北村一輝)の助けを借り、コリーは迅の家族が暮らす岐阜を訪ねることになる。
映像にはさらに、急死した息子の心臓をドナーに提供するという決断を迫られた父親(永瀬正敏)の「もう戻ってこんとでしょ」という痛切な呟き、心臓病を抱えて移植を待つ少年・久志の母・由美(岡本玲)が漏らす「喜んでいいんかな…」という複雑な思いなど、ドナー(臓器を提供する側)とレシピエント(臓器を受け取る側)、そのどちらにも存在する深い葛藤と祈りが映し出されていく。
「人はどこへ行くかわからない。でも、心の中に居続けるの──」と語りかけるコリー。最後は、川で手を耳に当てて何かを聞こうとするコリーと迅の姿で幕を閉じる。姿は消えても、心にはずっと。たしかにそこに“いる”という鼓動と記憶が、時を超えて人と人をつないでいく…。
場面写真(10点)は、コリーが、心臓移植を待ちながら入院する少年・久志や少女・瞳と一緒に過ごす姿や、神の島と呼ばれる屋久島で出会った迅との日常を重ねる穏やかなひとときなどが切り取られている。さらに、コリーの働く病院に温かいお弁当を届けるめぐみと亮二、心臓病を患う久志を母親・由美(岡本玲)が抱きしめる姿、そして迅の両親である英三(利重剛)、幸江(中嶋朋子)らの姿も捉えられている。
亡くなった子どもの心臓を提供する決断をした家族、その鼓動を受け継ぐ子どもとその家族。それぞれの立場で揺れ動く想いが交差し、「生と死」のあわいにある“愛のかたち”と“命のつながり”が静かに浮かび上がる場面写真となっている。
なお本作は本年度、第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナル・コンペティシ ョン部門でのワールドプレミア上映を皮切りに、第56回インド国際映画祭のICFT-UNESCO ガンジーメダル・コンペティション部門にも選出。そのほか、バンコク国際映画祭、リオデジャネイロ国際映画祭、マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭、ストックホルム国際映画祭、ロンドン東アジア映画祭、エルサレム女性映画祭など、海外映画祭への正式招待上映が続々と決定している。
映画『たしかにあった幻』は、2026年2月6日より全国公開。

