ジャズミュージシャンたちのグルーヴが人の心を、歴史を揺さぶる! 『叛逆のサウンドトラック』予告編解禁
2025年アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた音楽ドキュメンタリー映画『叛逆のサウンドトラック』より、予告編が解禁された。
【動画】映画『叛逆のサウンドトラック』魂のリズムと歌声が全編を貫く予告編
1961年2月のある朝、歌手のアビー・リンカーンとドラマーのマックス・ローチは、新たに独立したコンゴの首相パトリス・ルムンバの殺害に抗議するため、国連安全保障理事会に突入した。この瞬間、世界は“脱植民地化”という名の地殻変動に飲み込まれていく。希望と混乱が入り混じる、新しい時代の幕開けだった。
その6ヵ月前、16の新興独立アフリカ諸国が国連に加盟したことで、投票の多数派は旧宗主国から新興国へと移り、国際政治の重心が揺れ動いた。冷戦の緊張が最高潮に達する中、ソ連のニキータ・フルシチョフは、国連総会で靴を叩きつけ、コンゴで進行していた新たな植民地主義的な権力奪取を激しく非難する。彼はアメリカの人種差別と、国連のルムンバ転覆への関与を糾弾し、世界的な脱植民地化を即時に実現すべきだと訴えた。
その裏で、ベルギー国王ボードゥアンは、かつての植民地コンゴの豊富な資源を失うことを恐れ、アイゼンハワー政権と手を組む。特に、原子爆弾製造に不可欠な高純度ウランの供給源として、コンゴを手放すことはできなかった。こうしてコンゴは、冷戦の政治的駆け引きと国連支配の中心舞台となった。
アメリカ国務省は“ジャズ外交”を開始し、ルイ・アームストロングを“アフリカ親善大使”として派遣する。だが彼の笑顔の裏では、CIAが支援するアフリカ初のポスト植民地型クーデターが進行しており、その結果、コンゴ初の民主的指導者ルムンバが暗殺されることになる。
この事件に呼応して、マルコムXはルムンバ支持を公言し、アフリカの統一とアフリカ系アメリカ人の人権闘争を結びつけようとした。彼にとっての闘いは「公民権」ではなく「人権」の問題であり、国連で世界に訴えるべきものだった。
一方その頃、アフリカ各地で活動していたブラック・ジャズ・アンバサダーたち―アームストロング、ニーナ・シモン、デューク・エリントン、ディジー・ガレスピー、メルバ・リストンらは、祖国アメリカで依然として差別が合法である現実に直面しながら、“誰のために演奏するのか”という苦しいジレンマを抱えていた。
本作は、そうした歴史の一幕を音楽と政治が共鳴した「もうひとつの冷戦史」として描き出す。アフリカの自決を破壊したその裏側の物語を、女性解放運動の先駆者で政治家のアンドレ・ブルアン(中央アフリカ共和国)、国連平和維持活動を率いたアイルランドの外交官コナー・クルーズ・オブライエン、ベルギー=コンゴ出身の作家イン・コリ・ジャン・ボファン、ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフの視点で語る。
この作品は、音楽と政治、冷戦とアフリカ独立、個人の夢と国家の現実が交錯する壮大なドキュメンタリーであり、「歴史の裏のリズム」を鮮やかに聴かせる映像詩だ。
予告編は、魂の歌とリズムが全編を貫く。冒頭、アビー・リンカーンの事件の前触れを思わせる歌声と共に「ルムンバがコンゴで殺された」というタイトルが出され、マックス・ローチの「語り」のようなドラムの音が響く。ルイ・アームストロングが、独特の深みある声で「俺の罪は肌の色だけ」と歌い、「冷戦下、政治の茶番に利用されたミュージシャンたち」というタイトルの後、ディジー・ガレスピーが刻む軽快なリズムに呼応して、抗議の机をたたくフルシチョフ、ハマーショルド、アイゼンハワーという、茶番劇の主役たちが顔をそろえる。
続いて、ガレスビーが「リズムがすべてだ」とミュージシャンの純粋さと矜持を感じさせるコメントをすると、「共産主義者ではない、アフリカ人だ」という本作の主人公コンゴ共和国初代首相ルムンバの声とともに顔が映る。
マルコムXの「アメリカ全体が狂っているんだ」のコメントに、像が吊り上げられている象徴的なカットが入る。民衆がルムンバに抱き付き「1960年6月30日コンゴは独立します」というルムンバのコメントの後に、アート・ブレイキーのパワフルなドラムの音色が響く。国連の様子、銃、ミサイルの映像の後、ジョン・コルトレーンの激しいサックス演奏に、ルムンバが後ろ手で髪をつかまれている映像が重なる。
「自分たちの物語は、自分たちで語る」―作家イン・コリ・ジャン・ボファンの低音で響く言葉の後に、国連になだれ込んだミュージシャン達の姿が。そのシーンに重なり、仲間に何かを伝えるような、痛切な深い声で、涙目のアビー・リンカーンの歌声が響く。自由や尊厳のために闘った、多くのミュージシャンや革命家の物語を後世に伝えおくような、そんな想いを感じさせる予告編になっている。
映画『叛逆のサウンドトラック』は、8月7日より全国順次公開。

