渡辺謙、俳優は「恥をかく商売」人生初ミュージカルに挑む飾らない素顔とは

25日に放送されたテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)にて、渡辺謙がミュージカル『王様と私』に挑戦する姿が放送された。本作で第69回トニー賞ミュージカル部門の主演男優賞にもノミネートされた渡辺だが、番組では、厳しい稽古に時に弱音を吐き、苦しみながらも真摯に向き合う姿が映し出され、飾らない渡辺の素顔が垣間見ることができた。
【関連】渡辺謙、ブロードウェイ・デビュー! 『王様と私』で王様役に挑戦
本番組は、「渡辺謙55歳、人生最大の挑戦」と題し、2014年12月から、『王様と私』公演初日までの約半年間に渡る密着取材の模様を映したもの。渡辺にとって、『王様と私』への出演は、人生初のミュージカルというだけでなく、ブロードウェイの主役という「大勝負」とも言える仕事である。本作の演出家である、バートレット・シェールからの熱烈なオファーによって、大抜擢された。
渡辺にとって最大の懸念は、歌。2015年の年明けから、ニューヨークにアパートを借りて移り住んだ渡辺は、「ベッドの中でもずっと歌ってますよ」というほどの、芝居漬けの日々を送っていた。稽古では、何度も同じ場面の演技を繰り返し、その度に新たな動きやセリフを試してみる。渡辺は、「とにかく試すんです。可能性を試す。恥をかく商売だと思っているから、捨てて、塗り替える。それができる勇気を持っている奴が最後に残る」と、俳優としてのあり方を語る。
精魂込めて、稽古に臨み、舞台へ全生活を捧げる渡辺だが、それでも、苦しくもがく姿も見せる。「芝居は積み上げてきたものを、一回どこかに捨てるもの。でも、(今は)捨てるのがすごく怖い。自分が得意とする言語じゃないから、ひるんじゃうところがある。肝っ玉が小さいんだよな。本当に情けない」。渡辺が、初めての通し稽古を終えて、そう情けない本音を漏らす場面も映されていた。
それは、渡辺にとっての流儀「断崖絶壁であがく」を、まさに体現する姿だった。そして、「何があろうが、与えられたものに対して諦めないこと」と渡辺なりのプロフェッショナルの定義を示した。