“カメ止め”上田慎一郎脚本 “笑いの力”を武器に東日本大震災と真摯に向き合うヒューマンドラマ公開
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『カメラを止めるな!』の上田慎一郎が脚本を務める、“笑いの力”を武器に東日本大震災と真摯に向き合うヒューマンドラマを描く映画『永遠の1分。』が、2022年春に公開されることが決定。岩手県久慈市でのメイキング映像が公開された。
【動画】映画『永遠の1分。』メイキング映像
『カメラを止めるな!』で撮影監督を担った上田の盟友・曽根剛がメガホンを取った本作。主人公は、3.11を題材にしたドキュメンタリーを撮ってくるように命じられ来日したスティーブ。被災地に入り、復興の道半ばの現状を目の当たりにした彼は、「部外者がこの題材を取り上げることは許されるのか?」と葛藤する。
本作は、“笑い”がもたらす癒しの力で困難や葛藤を乗り越えていく姿を描くヒューマンドラマであると同時に、「東日本大震災を題材にしたコメディ映画を撮る」という、制作陣が映画化にあたり実際に直面した苦悩も描写。震災から11年、さらにコロナ禍という新たな困難に直面した現代人に、「困難な時こそ、前を向く力、ユーモアが必要」とエンターテインメントという枠組みを使って、生きる上で必要な多くを授けようとする作品に仕上がっている。
主演は、『コンフィデンスマンJP』で、ダー子(長澤まさみ)たちの世話をする執事を演じるなど、日本を拠点に幅広く活躍するニューヨーク出身のマイケル・キダ。ヒロインの麗子役には、ヒップホップ・シーンでカリスマ的な存在感を誇る沖縄出身のラッパー・Awich(エイウィッチ)。本作が映画初出演となる彼女の、グルーヴ感あふれる圧倒的な歌声も大きな見どころだ。
そのほか、『孤狼の血 LEVEL2』の毎熊克哉、声優やCMのナレーションを中心に日本で活躍するライアン・ドリース、『万引き家族』の片山萌美、海外を拠点に女優活動をするルナ、ドラマ『最後の晩ごはん』の中村優一、映画『アイネクライネナハトムジーク』のアレキサンダー・ハンター、タレント・女優の西尾舞生、そしてベテランの渡辺裕之など国際色豊かな俳優陣が脇を固める。
メイキング映像は、スタッフとキャストが岩手県久慈市の各地で、現地の人々の協力を得ながら和やかに撮影を行う様子や、主人公が震災学習ツアーに行くシーンを台本無しでドキュメンタリー風に撮影する様子などを収録。そのほか撮影開始時に曽根監督が「この『永遠の1分。』は、8年越しくらいずっと撮ろうと思っていた企画で、ようやく今年撮ることになれて。本当に良い作品を作りたいと思ってますので皆さんよろしくお願いします」と役者やスタッフに熱く呼びかける姿や、終了後に「行く先々でみんなが非常に協力的で、撮影を楽しんで頂けている姿が印象に残っています」と感慨深い表情で語る姿も収めている。
脚本の上田は「大地震、大雨や台風、感染症。この世界では、時に人の力ではどうしようもない事が起きます。しかし、それを乗り越える力を人間は持っています。困難な時こそ、前を向く力、ユーモアが必要だと信じています。この映画が、困難に立たされている世界中の人々の『力』になればと願っています」とメッセージを寄せている。
映画『永遠の1分。』は、2022年春全国公開。
【出演者・監督・脚本全文コメント】
■マイケル・キダ(スティーブ役)
初めて台本に目を通した時、笑って泣きました。絶対にこの作品に参加したい!と思ったので、スティーブ役に決まったときは感激でした。撮影で東北に行ったとき、役を演じていることを忘れて、自分が本当にスティーブであるかのような感覚になることがありました。あまりの生々しさにときに苦しさを感じることもありましたが、被災者の方に聞いた沢山の教訓が、私を前向きに、笑顔にさせてくれました。
この作品がみなさんにも同じように希望を与えてくれるものになることを願っています。
■Awich(麗子役)
私は沖縄で生まれ育ちました。今回演じた麗子は東北の出身。全く違うようですが、「多くの人々の命が奪われる大惨事が起こった歴史を持つ土地」として背負っているものは似ているように感じ、自分の中でそこを照らし合わせていました。それからもう一つ…私は3.11が起こった2011年に最愛の夫を亡くしました。なので、麗子の経験とは時系列的にもとても通じる部分がある。大切な人が、ある日突然いなくなる。今までの生活が、ある日突然一変する。その経験は他人が思うよりずっと長い間、当事者を苦しめるものです。
自分や他人を責めたり、やり場の無い怒りや空虚感と戦ったり…そういう状態から抜け出せるきっかけとなるものが、音楽だったり、映画だったりするものだと私は信じています。だから私は今回の作品に携わりたいと思いました。今回の作品に込めた私たちの願いが、東北の仲間達、そして世界中の同じ痛みを持っている方々に届きますように。
■曽根剛(監督)
被災者でもない私が3.11を描くことに関しては、正直後ろめたい気持ちが少なからずありました。取材などで何度か被災地を訪れましたが、その後ろめたさはむしろ強くなりました。私には何もできることがないのではないか、映画を撮ることも不謹慎ではないかと。
本作の題材は日本の大震災だけではなく、あらゆる困難に立ち向かう人間の姿、それは世界共通のものとして再構成されるに至りました。映画の中で描かれている登場人物たちは、実際の私たちの姿でもあります。まさに世界が困難に立たされている今、本作が何らかの役に立ち、多くの人を前向きにするきっかけになればと思います。
■上田慎一郎(脚本)
本作の企画が持ち上がったのは 2013年頃。監督である曽根剛から「3.11を題材にした映画の脚本を書いて欲しい」と依頼が来ました。自分は3.11の部外者だという感覚がありました。自分に3.11を書く資格はない。そう思っていたのです。しかし、思い直しました。「3.11を題材にしたコメディ映画を創る人の話」であれば自分にも書けるかもしれない。
大地震、大雨や台風、感染症。この世界では、時に人の力ではどうしようもない事が起きます。しかし、それを乗り越える力を人間は持っています。困難な時こそ、前を向く力、ユーモアが必要だと信じています。この映画が、困難に立たされている世界中の人々の「力」になればと願っています。