人気配信者スタンミじゃぱん、病気で諦めた“俳優の道”へ再出発 2000万円かけてミュージカルに挑む理由とは?

インタビュー
2025年6月14日 07:30

■目指しているのは「新海誠」

スタンミ:そうなんです。オーディションを受けたり、企画を提案する時に、「映像資料はありますか?」って言われちゃうんですけど、俳優の卵すぎてそんなものなくて(笑)。だったら映像作っちゃおうということで制作しました。

――映画もミュージカルも総合芸術なので、たくさんの方たちが賛同して集まっているのを拝見するとスタンミさんの人望を感じさせます。でも映像とミュージカルって、同じ芝居でも使う神経も筋肉も違いますよね。

スタンミ:まさに。映像って生っぽさがうまいとされているんですけど、舞台の芝居って生っぽさが絶対ではないんです。リアリティーラインをどこに置くかが分からなくて、舞台だと少しオーバーに魅せなきゃいけないんですけど、その感覚をつかむのに苦労しました。ただオーバーに表現するのではなく、元の感情の延長線上で表現しなきゃならないんです。


――ミュージカルを選んだことでさらに難易度が上がりそうです。なぜミュージカルに?

スタンミ:純粋にミュージカルが好きなんですよね。有名な作品はほとんど見ていて、映画で見て気に入ったものがあれば観劇することもありました。

実は今回演出を担当する永野拓也さんが演劇業界からゲーム業界に来た経歴の持ち主で、たまたま僕の配信を見てくださっていたんです。配信中に『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」をふざけて歌った時があったんですけど、そこでミュージカルが好きなことを知ってくださって、仲良くなりました。ワークショップも永野さんに紹介してもらったんです。僕も手術をしてゲームからはみ出そうって思っていたので良いタイミングでした。

そこから一緒に舞台をやらないかというお話を永野さんにいただいたのですが、最初から『H12』とは決まっていなかったんです。2.5次元や時代劇など6作品くらいの候補があったのですが、僕が選んだ『H12』がたまたま永野さんが手掛けた作品でした。

――すごい運命。

スタンミ:『H12』だけ、ついていけないくらい難易度が高いミュージカルだったんです。大体の人が「うまく歌えるようになりたい」って漠然と思っていると思うのですが、そんな感情を持ちながらも死んでいくじゃないですか。僕も歌はうまくない方なのですが、強引に目標を作らないとうまくなる前に終わっちゃうなと思ってミュージカルを選びました。僕は「始めてから目標に達する」んじゃなくて「目的を作ってから始める」派なんです。例えば英語を話せるようになりたいと思ったら、僕は多分、英語だけで1週間旅行する日程を先に立てちゃいます。そっちの方が行動する速度が速くなるんです。なんとなくで密度の低い1年を過ごすよりかは、無理しながらも密度の高い3ヵ月を過ごしたいですね。

――YouTubeのミュージカル挑戦に密着した動画では「負荷をかける」がキーワードになっていましたが、スタンミさんの人生を通しても「負荷をかける」が大事なテーマになっているのかもしれませんね。

スタンミ:そうですね。僕、25歳まで人の5倍くらいだらけてきたので、人より負荷をかけておかないと怖いんです。『H12』はダンスも歌もレベルが高くて、今の僕だと全部ができていない状態かもしれない。ダンスも人前でちゃんと披露するのが今回が初めてで、振り入れの時にビックリしました。10分で覚えられる人もいるんですよ。だから今は人の3倍以上頑張って追いつくしかないです。

――努力を続けている中で、今一番課題に感じていることはなんですか?

スタンミ:まんべんなく全部です。一番とかなくて。ダンスも歌も全部のレベルが他のキャストさんたちのレベルに達してないと思います。これから研ぎ澄ます期間なのですが、今は宿題を渡されている状態。みんなの課題の飲み込み方に圧倒されているので、かみ砕く部分はちょっと頑張りたいです。

――スタンミさんってメンタルケアがうまいなと以前から思っていたのですが、今みたいに自分の足りなさを実感しても気持ちが落ちないですよね。

スタンミ:僕の考え方の話をしてもいいですか? 僕らって生まれた瞬間から「よ~いドン」で競争していると思うんです。僕は『H12』という箱に入って、この環境の中での速度は遅いけれども、世界レベルで見たらいろんな人をぶち抜いていっていると考えています。何かに挑戦する時は全部この考え方に当てはめていて、その団体でレベルが低かったとしても、全世界の中ではものすごい速度で進んでいる。そう考えると落ち込めないんです。誰よりもできない感覚はあるけど、課題を持ち帰って練習してる時に「うわ、これ今ぶち抜いてんな」って思うんです。自分がいるコミュニティーだけではなく、もっと広い範囲で自分の位置を見つめるのがメンタルを保つ秘けつかもしれません。でもこの考え方が強さなのかも分からない。よく言われるんです、「メンタルが強いですね」って。でも僕からすると逆に逃げているんじゃないかって。努力することで考えすぎることから逃げている気もしています。


――なるほど。お話を聞いていると、スタンミさんの行動力ってレベチだなと改めて感じました。俳優になろうと思ったら、オーディションやレッスンに行くのを思いつきますが、いきなり主宰しちゃうなんて。

スタンミ:僕が今目指している人って新海誠さんなんです。新海さんの商業デビュー作『ほしのこえ』は、監督・脚本・美術・編集など制作作業のほとんどを1人でやっていて、小規模から始まったのにもかかわらず、評判を呼び話題になりました。いい作品を作って良い興行成績を収めれば、出資する人が増えていく。それが続いて、『君の名は。』のような大きな作品が生まれました。これが僕が目指すやり方です。今はそれができる時代で、俳優になりたいからといって、オーディションを受けるだけが正解じゃないと思っています。

――そんな熱い思いとスタンミさんの2000万円を持ち出して生まれた『H12』の見どころは?

スタンミ:喫茶店を舞台に12人の男女が繰り広げるラブストーリーを描いた作品なのですが、恋愛をしたことがある人なら、当てはまる部分があるんじゃないかと思う共感できる物語になっています。ミュージカルなので多少の誇張はありますが、似たようなシチュエーションは誰もが体験していると思います。あと皆さんが想像するミュージカルとは異なる作品にもなっていて、カジュアルだけどレベルが高い作品です。僕が『タイタニック』に出会って人生が変わったように、『H12』で初めてミュージカルに触れる方もいると思うので、そんな方たちのエンターテインメントの入口になるような体験を提供できるとうれしいです。

僕が歌う姿を見たことがある視聴者の方もいると思うのですが、舞台上の僕の歌はあの頃とガチで全然違うと思います。新しいスタンミじゃぱんの姿を確実に見れます。ぜひ生でその目で楽しんでほしいです。

 ミュージカル『H12』は、6月13日(金)~6月16日(月)まですみだパークシアター倉で上演。

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