松村北斗主演『秒速5センチメートル』が見せた実写の「正解」を紐解く アニメと異なり描かれた“余白”のストーリーの良さとは
■松村北斗&青木柚が表現する取り残された貴樹の内面
本作でキーとなるのは、やはり明里との思い出に取り残されている貴樹の存在だろう。まず、大人になった貴樹は仕事中の私語を“無駄話”と表現し、ただ淡々と目の前の仕事をこなすような人間になっていた。明里の前では、あんなにも自分の内側を見せていたのに、社会人になってからは「遠野さんのプライベートって謎だよね」と言われるような、職場になじみきれていない存在になっていたのだ。
そんな大人に成長した貴樹を演じたのが、SixTONESの松村北斗。「きっと本当の自分をわかってくれる存在は、この世界のどこかにいる」といつまでも明里を求めて、いつまでも前に進むことができない貴樹を演じる姿が印象的だった。
また、高校時代の貴樹を演じた青木柚の“いるはずのない”明里に想いを馳せている目線もなんとも切ない。栃木と鹿児島、距離にして約1500km。文通で近況を報告しあっていた自分を、吹雪の日、栃木・岩舟で再会した日に置いてきてしまっており、いつまでもあの日に心を巡らせる。自分がいるはずの場所は「ここではない」と信じてやまない表情は、地方出身で東京に出ることを夢に見て「きっと東京でなら、自分は輝けるはずだ」と思い込んでいた学生時代の筆者と重なった。
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