松村北斗主演『秒速5センチメートル』が見せた実写の「正解」を紐解く アニメと異なり描かれた“余白”のストーリーの良さとは
■アニメを補完する“余白”の描き方
アニメーション映画は、余白たっぷりで描かれていた同作。「あのとき、貴樹はどういうつもりだったのか」「貴樹が取り残されているのに対して、明里はどのような毎日を過ごしているのか」――アニメーション映画を見た後は、議論したくなる“描かれていない部分”について話すのがなんとも楽しかった。
それに対して、今回の実写版は、その余白の一部が埋められるように構成されている。しかし、この余白が個人的にはノイズになっていないし、納得感があるものがほとんどのように感じた。
特に物語の終盤、無駄話を嫌う貴樹の言葉に対する思いは胸をギュッと掴んで離さない優しい強さがある。このような感情になる、原作を保管してくれるシーン、そして音楽が作中に散りばめられているのだ。
また、幼少期のように近くにはいなくて、決して交わることのない貴樹と明里を繋ぐ音楽、天文手帳、新宿という街の存在も非常に納得感があった。
アニメーション映画のクライマックスは「結局これって…」と答えが分からずじまいだったが、今回の実写映画版では、1つのゴールのようなものが示されており、その描写から、決して近くにいることだけが答えではない“思い出の向き合い方の正解”のようなものを感じる。
私たちは思い出と向き合い、どのように毎日を生きるべきなのか。見た後にきっと自分の人生を前向きなものにしたいと思わされる作品だった。



















