『赤い袖先』ジュノが演じた名君イ・サン 「韓国人がもっとも愛する王」と言われる理由とは?
ヒョンビンやソ・ジソブ、イ・ソジンなど、トップ俳優たちが演じてきた、朝鮮王朝史に輝く稀代の名君イ・サン(正祖)。「韓国人がもっとも愛する王」と言われ、これまで数多くの作品で映像化されてきた。イ・サン=朝鮮第22代王・正祖を演じることは、韓国の俳優にとって“夢”であり、“誇り”でもある。2PM・ジュノ主演の『赤い袖先』は、そんな彼の人生を“1人の女性を愛した男”としての側面から描いた歴史ラブロマンスだ。イ・サンはなぜ、多くの人を惹きつけるのか? 本作の内容に沿って、4つのポイントを挙げながら解説していきたい。
【写真】ベストカップル賞も受賞! 身分が違うカップル“王”イ・サン(ジュノ)と“宮女”ドギム(イ・セヨン)
■“韓国ドラマチック”なイ・サンの人生
人徳者であり、数々の政治的改革を行ったことは、イ・ソジン主演の大ヒット作『イ・サン』や、『トキメキ☆成均館スキャンダル』で描かれているとおり。民を思い、西洋の学問など新しい時代に目を向け、派閥や身分による差別のない国を目指した革新的な人物だ。しかし、その魅力は業績や人柄だけではない。イ・サンの人生は、見事に“韓国ドラマチック”で見応え要素が多くある。
(1)幼少期に父の非業な死を目にしている
(2)政治の権力闘争に巻き込まれ、常に暗殺の危機にさらされていた
(3)王座に就き、権力を手にして以降、ばっさばっさと敵を成敗していく(やられたらやりかえすの法則)
(C)2021MBC
さらに本作では、これまでの“イ・サン作品”の中でもとりわけ、“彼がもっとも愛した宮女”とのロマンスが物語のメイン。
(4)王の初恋 という切り口にときめかされる。では、これらのドラマチック要素を細かく見ていこう。
■ 父の非業な死
(C)2021MBC
イ・サンの父、思悼世子(サドセジャ)は、頭脳は明晰だったが、政権を牛耳っていた派閥・老論(ノロン)派の重臣たちに反抗的な態度をとり、敵に回してしまった。彼らの告発により(世子の)父である英祖が立腹、罰として世子を米びつに閉じ込めてしまう。当時10歳だったイ・サンが必死に祖父・英祖に懇願するも許されず、そのまま米びつの中で餓死する悲劇に。この事件は、サンの心に大きなトラウマとして残り、祖父に認められなければ自身も罰せられるという恐怖心に苦しめられていく。同時に、父を死に追いやった反対勢力をいつか押さえ込む!と心に誓うのだ。本作では、こういった思いを(イ・セヨン演じる)ドギムに明かす場面があり、序盤の名シーンとなっている。
■ 常に暗殺の危機
当時、絶対的権力を握っていた派閥・老論派は、イ・サンを除外する機会を常に狙っていた。幼い頃からサンは、“いつ刺客に狙われても逃げられるように”寝間着に着替えることなく(つまり常服を着たまま)横になっていたという。武術にも優れていたと言われるが、それも刺客に備えてのこと。ちなみに、ヒョンビン主演映画『王の涙‐イ・サンの決意‐』では、実際にあったイ・サン暗殺未遂事件を描いている。
■ やられたらやり返す
(C)2021MBC
父を悪く言う言葉を聞いたサンが、「私は思悼世子の息子だ」と立腹する場面もあるが、サンは即位後すぐに、亡き父を死に追いやった老論派の重要人物を罰していく。王となり、力を手にして以降、発揮されるカリスマたるや…。老論派一族で、亡父と険悪な仲だった(チャン・ヒジン演じる)祖母・中殿キム氏とのスリリングな駆け引きも見ものである。
■ 王の初恋
上記のような境遇から考えても、サンにとって唯一心を休めることができたドキムの存在は、いかに大きかったかは想像に難くない。では、ドギムはどんな人物だったのか?
幼い頃に父が罪を着せられ、宮仕えに入ったドギム(徳任)は、サンの母・惠嬪(ヘビン)ホン氏に仕える侍女となった。つまり、サンとは幼い頃から顔見知りだった可能性もある。文才があり、サンの妹たちと小説を書いたという話や、筆跡の美しさからサンに讃えられたという逸話も残っている。サン自身も書物を愛したことから、話が通じたに違いない。
また、サンから特別の寵愛を受けたドギムだが、まだ正室に子がないのに同衾しては道理に欠けるとして断った。その後再び求められた際も拒んでおり、本作では2人のロマンスの真実にも迫っている。ちなみに、多くの側室を持ったサンだが、宮女の中からサン自ら選んだのは、ドギムただひとり。側室となった際、サンは彼女に「宜嬪(ウィビン)ソン氏」という名を与えるのだが、劇中そのエピソードも描かれている。朝鮮史に残る名君の“ロマンチスト”な面を、本作で確認してほしい。
『赤い袖先』は、Blu‐ray&DVDリリース中。U‐NEXTで独占先行配信中。