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『エルピス』「終着点」は“浅川”長澤まさみの“斎藤”鈴木亮平からの自立か

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ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』第9話より
ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』第9話より(C)カンテレ

 ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜22時)第9話が19日放送された。もがいてももがいても、圧倒的な力によって押し潰され、真実を葬られ、さらには自分がもがいたことによって、誰かが犠牲になってしまったとしたら、どう立っていればいいというのだろう。長澤まさみが主演を務め、自分自身と葛藤しながら、真実を求めて社会、組織の腐敗に立ち向かう意欲作も佳境に入った。しかし終着点はまだ見えない。

【写真】えん罪事件の真相究明でついに死者が… 『エルピス』第9話を写真で振り返る

 浅川恵那(長澤)たちの追う死刑囚のえん罪疑惑に関わっていると疑われる大門副総理大臣(山路和弘)に、過去にも別の大きな疑惑が浮上していたことが分かった。派閥議員によるレイプ事件をもみ消し、その被害者がのちに自殺したというのだ。村井喬一(岡部たかし)には、大門の娘婿で秘書の大門亨(迫田孝也)の内部告発によってそのスクープをつかんだものの、もみ消された過去があった。

 岸本拓朗(眞栄田郷敦)に向かって、村井は「こんな一生にあるかないかのデカいスクープ取れたのがうれしくてしょうがねえし、誰にも渡したくねえし。渡すくれえなら、俺が墓場まで持ってく」と吐き捨てる。岸本だって、動き出したきっかけは正義感ではなかった。そして通常の相手ならば「そんな大スクープ眠らせちゃダメですよ! 僕が代わりに世に出します」と息巻きそうなものだが、そうではない岸本だからこそ、「やるよ、バーカ」と村井は託した。同様に、友人の自殺を背負い続ける岸本の内面が見えたからこそ、大門亨も彼を信じられた。「真っ暗闇の中に細い光が差したような気持ちだ」、と。

 しかし、その大門亨が遺体となって発見された。表向きは病死との発表だったが、彼の葬儀でマスコミ対応をしていた斎藤正一(鈴木亮平)に、村井は(マスコミともめていたのは)「本当は病死じゃなくて自殺だから?」「本当は自殺じゃなくて他殺だから?」と斬り込む。そして「この先はもう、戻って来れねえぞ」と忠告した。浅川が願うのと同じく、今でも斎藤を信じている視聴者は多いはず。しかしここまで来ても、その表情が意図する方向が読み取れない。斎藤は「本人の中にあるべきもの」を持っているのだろうか。

 「彼(亨)の誠実さにはどれだけ助けられてきたか分からない」。強面の大門副総理大臣の「案外泣ける、意外な一面」という“いい記事のネタ”を耳にして、村井はため込んできたものを抑えきれなくなる。そして「ニュース8」のスタジオに乗り込み、「正義面しやがって。ざっけんな!」と罵倒を繰り返す。第7話で「俺の中に(岸本のような)あの情熱が消えちまっている」と泣いていた村井が。

 第9話のサブタイトルは「善玉と悪玉」。悪玉を駆逐したところで、組織や社会はそう簡単には変わらない。しかし、悪玉が増えすぎてバランスを欠いた社会はやはり不健康だ。本作は「一度は失った“自分の価値”を取り戻していく」物語だと謳(うた)われている。最後には、浅川が斎藤に頼ることなしに、そこから解放され、自分自身として立つのかもしれない。岸本らと真実を携えて。(文:望月ふみ)

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