【レビュー】『FFタクティクス - イヴァリース クロニクルズ』、快適性が向上しフルボイス化で蘇った名作はシミュレーションRPGファンなら見逃し厳禁

1997年に発売された名作シミュレーションRPG『ファイナルファンタジータクティクス(以下、FFT)』を現行機向けに改修した『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』(Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Steam(10月1日発売))が9月30日に発売。『FFT』を忠実に再現した“クラシック”と『FFT』に高解像度化やフルボイス化、当時シナリオを担当した松野泰己氏によるストーリーの加筆・調整などを施した“エンハンスド”の2バージョンを収録している。本稿では、PS5版の“エンハンスド”をメインに遊んでの所感を語っていく。
【写真】ドットの温かみを残しつつ美麗になった『イヴァリース クロニクルズ』スクリーンショット
本作の舞台は、太陽と聖印に護られた双頭の獅子が治める国“イヴァリース”。前王の病死によって即位した王子(2歳)の後見人の座と実権をめぐって、黒獅子・ゴルターナ公と白獅子・ラーグ公が激突し「獅子戦争」が勃発。イヴァリースの武門の棟梁である主人公・ラムザと、平民の出でありながら彼の幼馴染として育てられたディリータ。この2人を中心に人々の苦悩や生き様を活写する壮大な物語が紡がれていく。
■より美麗&スムーズになったゲームプレイは快適そのもの
“エンハンスド”ではシステムの改良が行われており、非常にゲームが遊びやすくなっている。例えば『FFT』ではできなかったユニットの移動のやりなおしが可能になっていたり、タクティカルビュー(上からの見下ろし視点)で敵味方の位置関係が把握しやすくなっていたりなど、かゆいところに手が届く仕様に。また、各ユニットの行動順を常に表示してくれる「コンバットタイムライン」や、R1ボタンを押している間だけゲームスピードを上げてくれる「倍速機能」など、とにかくプレイヤーのことを考えた作りが好感触だった。
バトル中はオートセーブされたデータをロードすることで数ターン前からやり直したり、リトライでユニット配置or戦闘開始直後からやり直したりもできる。ロードも爆速なのでストレスフリー (C)SQUARE ENIX
本作は中間の難易度「スタンダード」でも敵が強く骨太なバトルが楽しめるため、こういった快適性を上げてくれる調整は本当にありがたい。バトルは敵味方のユニットが入り乱れて順番に行動していくオーソドックスなシミュレーションRPGなのだが、高低差や射程の概念に多彩なジョブ・アビリティなど、とにかく考えることが多い。メインストーリーはもちろん、ストーリー外で発生するランダムバトルの敵も考えなしに突っ込むとあっさり負けるので、下手の横好きな筆者は序盤から何度かバトルに負けてしまった。
しかし、そこはRPGの醍醐味。バトルに勝てないときは、町で有効な装備やアイテムを購入したり、ランダムバトルで経験値やJP(ジョブポイント)を稼いだりして徐々に強くなっていけばよい。そうして難局を乗り越えていく楽しさがクセになっていく。もしどうにもならなくなったときは、コンフィグから難易度を一番易しい「カジュアル」にしてしまうのも手だ(難易度によるストーリーの違いはない)。
一度習得したアビリティは転職して別のジョブになっても使用可能。本作のアイテムはそれぞれに対応したアビリティを取得しないと使えないため「アイテム士」の育成はかなり重要に感じた (C)SQUARE ENIX
“エンハンスド”なら「ジョブツリー」画面からジョブの派生ルートや開放方法が簡単に確認できるようになっている (C)SQUARE ENIX
チャプター2から解放される「儲け話」では、ユニットを派遣することでアビリティの取得に必要なJPやギル(お金)を入手可能。チャプター2まで攻略したら積極的に使っていこう (C)SQUARE ENIX
■重厚で先が気になりすぎる架空戦記
本作のストーリーは、権力争いによる国家間の問題や貧富の格差から生まれる差別などを描く社会派な物語になっており、チャプター1からプレイヤーの心をえぐってくる。圧政に苦しむ人々を救うため、各地で要人誘拐や暗殺を繰り返すテロ集団「骸旅団」と戦うラムザは、戦いの中で彼らが犯罪に手を染める理由が自分たち貴族の起こした戦争であったことを知り苦悩。次々と「北天騎士団」に制圧され命を落としていく骸旅団員たちを見てラムザとディリータはなにが正義なのか分からなくなる…。さらに、「骸旅団」に誘拐されたディリータの妹・ティータの身に起きた悲劇によって、ラムザとディリータの間に決定的な軋轢が生まれてしまう…。
こんな感じで序盤から多くの人が命を落とす重すぎる物語が展開され、チャプター2以降も様々な人物の思惑が交錯する愛憎劇にぐいぐいと引き込まれた。戦記物ということもあって登場人物や専門用語がかなり多いのだが、『FFT』にもあった「ブレイブストーリー」に新しい解説が増えており、世界観を把握しやすくなっている。単純に読み物としても面白いので、プレイの合間にぜひ開いてみてほしい。
「ブレイブストーリー」の情勢ページでは、これまでプレイした物語を地理や対立関係を確認しながら振り返られるため、より深く物語を理解できるように (C)SQUARE ENIX
フルボイス化によってストーリーはよりドラマチックに。アルガスの名言「家畜に神はいないッ!!」は、CVを担当する吉野裕行の迫真の演技も相まって畜生度が倍増 (C)SQUARE ENIX
■遊びやすくなった名作が楽しくないわけがない
今回のレビューを通して『FFT』が長年ファンに愛される理由がよくわかった。敵の一手先を考えて自軍を動かす戦略的なバトルに、多彩なジョブ&アビリティによる自由度の高いキャラ育成。そして、重厚な架空戦記物語は今遊んでも古さを感じない。各種システムの調整でユーザビリティが向上した『イヴァリース クロニクルズ』は筆者のように初めて遊ぶ初心者も、当時から遊んでいるファンもきっと満足できると思う。
『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』は、Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Steam向けに、2025年9月30日発売(※Steam版のみ、2025年10月1日発売予定)。
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