『ちょっとだけエスパー』が、パラレルではなく1本線の世界だった意味 名言だらけの最終回を振り返る
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直後の映像によって、この時代から兆が引き上げたらしいことや、ナノ・レセプターを白い袖が映りこんだ男が回収したこと、ナノ・レセプターを想像させる銀色を背景に、四季とフミトがそれを飲んだらしいことが伝わった。フミトのナノ・レセプターも必要では? と感じることや、その後の四季のひとり暮らしのセッティングなどを考えると、文太らを助けた京、守らなければならなかった大切な人でありながら、自分自身で深く傷つけてしまった四季の姿を前にした兆と、文太らが、なんらかの形で協力したのかもしれない。
さて、なぜ文太らが「四季とフミトのラブラブ大作戦」を決行したのか。ディシジョン・ツリーが崩壊したなら、四季と文太が結ばれればいいのではないかという疑問もあるだろう。だが個人的に、もっとも残酷だなと感じていたのは、四季が、10年後の自分自身の死の瞬間を自覚したことだった。痛み、寒さ、絶望。死。そこで終わるのではなく、四季は、その瞬間を思い起こさせられたのである。これほど残酷なことがあるだろうか。
兆のことは、「四季を救うため」と言いながら、それは兆自身を救おうとする行動なのではと感じていた。1年後に出会い、その1年後に結婚して生活した8年間(ろうそくの8年)。事故の前に強烈な後悔があるならばまた違うが、その8年は幸せなものであったはず。それこそ、まさしく文太の言う「10年だってかけがえない!」である。それが、いまを生きる四季に、最期の瞬間を植え付けることになった。この半年間の記憶を持ちながら、文太や皆とともに生きていくということは、フミトとの未来の思い出もさることながら、四季が自身の死の記憶とともにあるということ。
今の四季を救うために、文太たち、兆、京ができることは、ナノ・レセプターを飲ませることだったのではないだろうか。そして四季を一生分愛した文太は、“ぶんちゃん”のストラップを通じて、フミトに自分自身の愛も託した。そのためにも、フミトの当日の記憶も消す必要があったのだろう。そして新たに出会った2人だが、ここからどう歩んでいくかは、今の2人次第だ。
◆自分の1日が、誰かのディシジョンを作っているかも
2026年を迎え、見事「ラブラブ大作戦」を完了させたbitファイブ、マイナスワンの言葉が刺さる。「生きていくことが私たちのミッションね」「僕たちが生き続ければ、未来の形は変わってくる」「それが四季と世界と、俺たちを救う」。
1日1日を生きることが、自分を、世界を作っていく。生きる、生きていく。太くてまっすぐなメッセージが染み渡ってくる。それが大変なんだと分かってはいるけれど、大切な人を、自分を救うにはそれしかないのだ。もし今たったひとりだったとしても、自分が1日生きたことで、見ず知らずの隣人のディシジョンが新たに生まれているかもしれない。自分は必要ない、苦しいと感じている小さなハチたちの、1人でも2人でもいいから、どうか本作のメッセージが伝わってほしい。そう感じるラストだった。(文・望月ふみ)

