男女の賃金格差に踏み込んだ新法、ハリウッド女優のギャラはどうなる?

ハリウッドにおける男優と女優の賃金格差が、あらためて注目を集めている。きっかけとなったのは、今月カリフォルニアで通過した新しい州法。まったく同じ職務の場合、性別で賃金を変えることは以前から違法だが、「Fair Pay Act」と呼ばれるこの新法のもとでは、「肩書きは違っても、職務内容が似ている場合、男女の賃金は同じでなければいけない」というものだ。
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この新法にどう対応すべきか、あらゆる業界が当惑している。昔から男優のほうが女優より高いギャラをもらっているハリウッドも、もちろん多分に漏れない。
昨年末のソニー・ピクチャーズに対するハッキングで、ジェニファー・ローレンスが、『アメリカン・ハッスル』で、男性の共演者よりずっと少ないギャラをもらっていた(ジェニファーは収益の7%、男性共演者は9%)ことが明らかになったが、この新法を受けて、その事例があらためて蒸し返されることにもなった。それについてジェニファーがコメントしたことが、さらにことを大きくする。
ソニーが男性共演者に自分より高いギャラを払っていたことを知った時、ローレンスは、「ソニーに対してではなく、自分に対して腹が立った。私がすぐにあきらめて、ちゃんと交渉しなかったから」と思ったという。また、「私は、“難しい人”“甘やかされた人”と思われたくなかった。でも、ネットで、自分が共演したすべての男優がもらったギャラを知った時、この人たちは決して“難しい人”“甘やかされた人”と思われることを心配なんかしていなかったんだなと思った」とも認めている。
彼女の率直なコメントに、エマ・ワトソン、ジェシカ・チャステインらは早々と賛辞を贈った。しかし、この騒ぎがハリウッドにおけるギャラの男女平等につながるかどうかに関しては、疑問視する向きが多い。この新法は、経験、教育、業績の上げ方、トレーニングなどの理由で賃金に差をつけることを許しており、もともと比べることが難しい役者という職業に関して、スタジオはいろいろと抜け道を見つけるだろうという皮肉な意見もある。いくら法律が通ったとはいえ、ジェニファーが言うように、「難しい人と言われたくない」と思う女優が急速に減るとも考えにくい。この法律が重要なステップであることは間違いないが、その効果は、あと数年たつまでわからないだろう。(文:猿渡由紀)