<アカデミー賞>「白すぎるオスカー問題」を救った、司会クリス・ロックの存在

日本時間29日、第88回アカデミー賞授賞式が米ロサンゼルスで開催された。今年の作品賞部門は、『レヴェナント:蘇えりし者』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『スポットライト 世紀のスクープ』の3本レースと言われ、最後まで行方が見えなかったが、結果的に『スポットライト』が獲得することになった。また、ノミネーション発表時から人種問題などが挙がったこの混乱の年に、立派に乗り切った司会者クリス・ロックは、アカデミーを救った。
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この3本の中では、『レヴェナント:蘇えりし者』がリードしていると思われていた。もし同作が作品賞を取ると、これまでなかった、同じ監督の作品が2年連続で作品賞を取るという例が初めて生まれることになる。それもあって、とりわけ着目されていたが、結局、歴史はそれほど大きく変えられなかった。
主演男優賞は、多くが予測していたとおり、『レヴェナント:蘇えりし者』のレオナルド・ディカプリオが受賞。子役時代から活躍し、オスカーにも過去5回ノミネートされている彼の名前が呼ばれた瞬間、会場にいた出席者たちは立ち上がり、彼に満場の拍手を送った。
主演女優賞のブリー・ラーソン、助演女優賞のアリシア・ヴィキャンデルも、大方の予想どおり。サプライズは助演男優賞部門を、『クリード チャンプを継ぐ男』のシルヴェスタ・スタローンではなく、『ブリッジ・オブ・スパイ』のマーク・ライランスが取ったことだろう。しかしライランスは英国アカデミー賞も取っているので、完全などんでん返しとは言えない。
今年の授賞式では、誰が取るか以上に、ホストのクリス・ロックが何を言うかに注目が集まっていた。2年連続で、演技部門の20人全員が白人たったことを受け、「白すぎるオスカー」というバッシングが起こったせいである。
ノミネーション発表後、スパイク・リー、ウィル&ジェイダ・ピンケット・スミス夫妻など著名な黒人が授賞式のボイコットを表明し、このノミネーションが発表になるずっと前にホストに決まっていたクリスにも、降板を要求しろというプレッシャーが、タイリース・ギブソンなどを含めた黒人セレブから上がっていた。しかし、その間、クリスはノーコメントを通した。
それでも授賞式当日は、おそらく最初にこの「白すぎるオスカー問題」に触れ、その後はその話題から離れるだろうと思われていたが、授賞式では、見事な形で人種問題に触れてみせ、終始、このテーマを引きずった。時にやや不快に感じた人もいたかもしれないが、この状況を彼以上に立派に乗り切れた人は、ほかにいないだろう。この混乱の年に、彼がたまたまホストに選ばれていたことはもちろん、降板しないでいてくれたことは、まさに、アカデミーを救ったとも言えるのである。