『半分、青い。』鈴愛と律のバディ感 真逆な二人の対等な物語に期待
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そして、第3話冒頭ではナレーションが、知的で冷静な律の胎児にチェンジする。生まれたてで母親に 「サルみたい」と言われたシワシワの鈴愛に対して、律は最初から可愛く、看護師さんには「おりこうさんだね~」と褒められている。対面した2人。新生児・鈴愛の心の声は、「なぜ? 私より一足先に生まれたそいつは、生まれたてなのに、サルではなかったのです。つるんとした可愛い顔で。こいつ誰?」。対する律のコメントは、「何、このサル?」と、実にクール。鈴愛の家は、食堂を営む庶民的な家庭。一方、律の家は、写真館を営む裕福でオシャレな家庭。生まれ方も対照的なら、家庭環境も、キャラクターも見事に正反対だ。
この描き方を見て気づいたのだが、律は単に「ヒロインを見守り、支える幼馴染みで理解者、ヒロインの取り巻き」なんかじゃない。もちろん幼馴染みで理解者であるのは事実だし、後には微妙な恋心も絡む可能性はあるが、二人はあくまで対等。むしろライバルや親友になるキャラの描き方に近い気がする。
律は鈴愛に分娩台を占領されていたために、待合室で生まれることになったり、「マグマ大使」のように鈴愛に笛で呼ばれてピアノを演奏してあげたり、鈴愛発案の「川をはさんだ糸電話」計画を遂行し、川に落ちたり、一見「好き放題」されている。それでいて、クールで物理好きで、喘息持ちで、友達の少ない律にとって、行動的で明るい鈴愛は、外の世界へ引っ張りだしてくれる存在だ。律をいちばん輝かせるのも、鈴愛なのだ。
朝ドラではヒロインを中心として「ヒロインを見守り、支える幼馴染」「恋や結婚の相手」が配置されることが多い。幼馴染は、永遠に恋の土俵に上がらず、支え続ける「いちばん都合の良い相手」であるケースも多々ある。しかし、『半分、青い。』の場合は、2人の関係は幼馴染で理解者で、親友で、ときには刺激を与え合うライバルで、凸凹の良きバディでもある。そこにはヒロインの物語と同時に、対等な世界として律の物語が広がっている。
信頼感やトキメキに加え、2人の真逆のキャラが紡ぐ物語は、『ふたりっ子』の麗子と杏子、『ちりとてちん』のA子とB子、『カーネーション』の糸子と奈津、『花子とアン』のはなと蓮子のような、太陽と月、光と陰のような味わいも楽しめそう。後にはここに、中村倫也なども絡んでくると想像すると、一粒で何度も楽しめそうな関係性なのだ。(文:田幸和歌子)