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「僕はカルマを信じています」 タイで起こる怪奇現象が恐すぎる 『女神の継承』監督が語る舞台裏

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■大切にしたのはリアルさとフィクションの楽しさのさじ加減

――前半は取材映像、後半は定点カメラを使い、クライマックスでは臨場感満点の手持ち主観映像と、異なる3つの心霊表現が駆使されていたのも面白いですね。

ピサンタナクーン監督:いずれもリアルに見えることが大前提ですが、単に怖いだけではなく、後半の儀式シーンでは劇的な見せ場も追求したかった。そのさじ加減が難しかったですね。

――怪異に遭遇した役者陣の芝居がとても自然で引き込まれましたが、目に見えない存在と共存する演技をどのように演出したのでしょうか。

ピサンタナクーン監督:シーンの設定だけを与えて、感じたまま自由に演じて貰いました。芝居が盛り上がりに欠けたり、過剰だったら僕が少し調整する。それだけです。

映画『女神の継承』より (C)2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.
――“女神の継承”が女性に与える精神的・肉体的ダメージも生々しい怖さがありました。

ピサンタナクーン:国籍・文化を問わず、女性の幽霊話は多いですよね。アジアでは未だに男性優位な印象で、女性を悩ます感情の揺れはドラマにしやすい。子どもを生んだり、家庭に縛られたり。母性の強さも物語の主軸になると思います。

――撮影中、不可解な現象が起きたりは……

ピサンタナクーン監督:しませんでした(笑)。僕は、暗がりで音がしたら、その原因をすぐ確かめたいタイプなんです。幽霊を見たこともないし、遭わなくてよかったなと思います。でもホラーは楽しくて大好きですよ!

■日本の心霊ホラーで影響を受けた作品

――日本の心霊ホラーで影響を受けた作品はありますか?

ピサンタナクーン監督:『リング』(1998)と『回路』(2001)は大好きです。黒沢清監督には20年前に東京でお会いしましたが、常に個性的で素晴らしい。日本以外なら『イット・フォローズ』(2014)と、アリ・アスター監督の映画も。新しい試みをしているので。

――新しいチャレンジが重要なんですね。

ピサンタナクーン監督:僕の目標はタイの観客にウケる、理屈抜きで面白い映画を作ること。その作品が海外に売れるかは、また別の話です。ただ、今回は最初から国際市場を視野に入れていたので、文化の違いから生じる疑問点はとことん議論した。タイ人以外の視点が加わったことで、全編が特別な仕上がりになりました。

映画『女神の継承』メイキング バンジョン・ピサンタナクーン監督(右)(C)2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.
――土着信仰がテーマながら、物語は普遍的で分かりやすかったです。

ピサンタナクーン監督:映画の冒頭、家々の前に吊るされた赤い布が映りますが、あれは悪霊を払うおまじないです。ナ・ホンジンとも相談して、説明が必要な部分と、謎のまま残す箇所を線引きしました。意味が分からなくても、異なる文化圏の観客にイメージが伝わる。それが驚きで、興味深い。女神は実在するのか、祈りの先に見えるものは何か。答えは皆さんの想像力と、映画のマジックのなかにあるのだと思います。

(取材・文:山崎圭司)

 映画『女神の継承』は公開中。

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