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松重豊&遠藤憲一、血だらけの出会いから育んだ絆 60代も互いの活躍に刺激受け切磋琢磨

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松重豊

遠藤憲一

◆「松ちゃんは、お父さんみたいな人」


松重豊
――現場で、松重さんの監督としての姿をご覧になっていかがでしたか?

遠藤:六郎がラーメンを食べている横で、五郎が普通にチャーハンを食べていて。不思議なシーンですよね。松ちゃんは役者を温かく包み込んでくれて、リラックスして芝居ができるようにしてくれました。あの日はアングルやカメラの動きにものすごくこだわっていて、松ちゃんは先生のようになって、スタッフに一生懸命に指導をしていました。演じながら、スタッフの教育もしながら、演出もしながら…と一人で何役もやっている姿を見て「本当にすごいな」と感心しました。

松重:『バイプレイヤーズ』は役者中心に脚本について話し合ったりする現場でしたが、その際にも僕は皆さんの意見をまとめる役割をしていたんです。役者たちから意見が出ると、スタッフを集めて「“こんなことをやりたい”と話しています」と、話し合いの段取りをしたり、意見調整をしたり。監督というのは、ある意味ですべての調整役でもあるので、その頃からその下地はできていたんですね。僕はそういうことが嫌じゃないタイプなので、向いているんだと思います。

遠藤:松ちゃんは調整がうまいだけでなく、こだわりが強いからね。『バイプレイヤーズ』の時も、僕らがなんとなくの感覚でやっていたとしても、松ちゃんは整理がつかないと納得がいかない。考えを深めていくのを見ていると「こういうところが自分には欠けているんだな」と気づかされることがたくさんありました。監督業は、こだわりの強い松ちゃんにぴったり! 今回の脚本を読んでもすっきりしていて、計算された空気感があって気持ちがいいなと思いました。出来上がった映画を観ても「これはすごいな」と、本当に面白くて感動しました。観終わってすぐに「大傑作だ」と松ちゃんに連絡しました。

(左から)松重豊、遠藤憲一
――本作では、人や食との出会いの喜びが描かれています。お二人の出会いとはどのようなものだったのでしょうか。

遠藤:初めて共演した作品って、なんだろう。

松重:瀬々敬久監督のVシネマだと思います。

遠藤:そうだったっけ!

松重:遠藤さん、血だらけになる役でしたよ。大体、僕らは血だらけになることが多かったんですけどね(笑)。瀬々監督のVシネマで遠藤さんとご一緒した時に、「こんなにすごい集中力を持った人は初めて見た。とても真似できない」と感じたことをよく覚えています。遠藤さんは韓国語を話しながら死んでいく役で、ものすごい気迫と集中力だった。

若い頃から、遠藤さんができなかった役がこちらにまわってきたり、僕ができなかったものが遠藤さんのところに行ったりと、お互いにやったり、やられたりしてきたわけです。周りからはライバル関係とも言われますが、僕は遠藤さんを尊敬していて、仲もとてもいいんですね。遠藤さんがどんどん技術をつけていくと、こちらも一生懸命にしがみつくようにして保っていた部分があります。

遠藤:そうだよね。大体、松ちゃんや光石(研)さんといったメンバーで、順番のようにいろいろな役をやっているなという意識があった。それが『バイプレイヤーズ』で一気に距離が近くなって。

松重:あそこから完全にフェーズが変わりましたね。怖い印象のあったおじさんたちが、「かわいい」と言われ始めましたから。おかしいんですよ! あんなにすごい集中力で血だらけになっていた人が、女の子から「かわいい」と言われるんだから(笑)。

遠藤:松ちゃんはあのメンバーの中で一番年下なんだけれど、お父さんみたいな人なんです。すべて段取りをして、すべてをまとめてくれる。そんな人は、松ちゃんしかいません!

松重:また大杉漣さんという、一番の年長なのに、一番やんちゃで人の話を聞かない人がいるから! 大変なんですよ(笑)。

遠藤:大杉さんが亡くなった後に、松ちゃんと光石さん、(田口)トモロヲさんと一緒に、大杉さんの家に行ったんです。地下鉄の駅で待ち合わせをしたんだけれど、その時にも松ちゃんが「何時に、何駅のどこで」とみんなに連絡をしてくれて。オレと光石さんが地下鉄の階段を上がったところで待っていたら、松ちゃんが下からやってきて「なんでここにいるんですか! 改札の前で待ち合わせだって言いましたよね!」とすごい怒られちゃって(笑)。

松重:「なんで上にいるんですか! 下だって言ったでしょう!」ってね(笑)。

遠藤:『バイプレイヤーズ』のメンバーは、とにかくみんなで言いたいことを言い合って、楽しんでものづくりをして。自分としても、大きな思い出の作品になっています。大杉さんのこともあったので、みんなが元気でやっていることが一番。とにかく元気でいろいろなことをやっている姿を見ると、それだけで刺激になります。

松重:遠藤さんのインスタからも、元気をもらいます。今回の映画でインスタをやろうとなった時に、モデルにしたのは遠藤さんのインスタです(笑)。あれも「かわいい」と言われているでしょう! 血だらけの遠藤さんを知っていて、今こうして遠藤さんが輝いているという歴史を思うと元気になりますよね。

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◆60代の展望は?

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