松重豊&遠藤憲一、血だらけの出会いから育んだ絆 60代も互いの活躍に刺激受け切磋琢磨
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――本作で監督・脚本・主演を務めた松重さんの姿から、刺激をもらうこともありましたか?
遠藤:ものすごく刺激を受けました。昔は「俳優は俳優のやることだけ考えていればいい」という時代でしたが、今はそれがどんどん変わり始めています。『SHOGUN 将軍』の真田広之さんもそうだけれど、自分の中にあるものを形にしたいという思いをきちんと持って、いろいろなことに挑戦する俳優さんが増えてきています。たくさんの才能が芽吹いていて、本当に面白い時代が来たなと感じています。松ちゃんは今回、その走りとして突き進んでくれた。松ちゃんに負けないように頑張りたいし、とても勇気をもらいました。
松重:テレビ局や映画会社のこれまでの枠組みや成功体験だけでやろうとしても、今後は面白い作品が出てこないのではないかという思いもありました。現場を見てきた僕らだからこそできることや、僕らにしか気付けない視点がきっとあるはず。役者がこういうチャレンジをしていいんだという空気を、伝染させたいなと感じています。
――切磋琢磨している、すばらしい関係性です。お二人は60代をどのように過ごしていきたいと感じていますか。
松重:40年の間、俳優業をやってきて、僕自身がキャスティングをする立場になるとは思っていませんでした。今回監督をやってみても感じましたが、やっぱりいい俳優さんというのは、にじみ出る人間性なんだと思うんです。遠藤さんにしても、どれだけ血だらけになってお客様を怖がらせていても、そこからにじみ出てくる人間性に僕も虜にされていました。そういう俳優さんのことを思うと、自分の作品でこんなふうに輝いてほしいと感じたりしました。これからは、監督ではなかったとしても、プロデューサーという立場などで、これまで自分がキャスティングしていただいた恩返しをしていきたいなと思っています。
遠藤:59歳の時に、亡くなられた西郷輝彦さんから「お前、いくつだ」と聞かれたことがありました。こちらとしてはどんどん年を取っていくなと思いながら「もうすぐ60歳です」と答えたところ、「若いなあ! 60代は最高だぞ!」と声をかけていただいて。今まで培ってきたものを全部出せるのが60代だというんです。僕は今年で64歳になるんですが、まだそれを実感できていないところがあって。きっと松ちゃんは、その言葉を真っ先に実感できたんじゃないかと思います。今、幸せでしょう?
松重:まだまだやることが残っていますからねえ…。遠藤さんは脚本を書いたり、現場でも「こういうものをやりたいんだ」とずっとおっしゃっていました。次は遠藤さんの監督作品に出演したいという思いもありますし、どんな形でもバックアップします!
(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
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