「世界が狂っているから」――“死”を描くホラーを人々が観る理由 『ザ・モンキー』オズグッド・パーキンス監督に聞く
――本作では思わず笑ってしまうような突飛な死が次々と披露されます。同じく、不条理な死をダークコメディのように描いた『ファイナル・デッドブラッド』(2025)もアメリカでは大ヒットしました。死という主題に人々が惹きつけられるのはなぜだと思いますか。
映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』場面写真 (C)2025 C2 MOTION PICTURE GROUP, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
パーキンス監督:この世界が狂っているからだ。絶対に起きないと思っていた事態より、さらにクレイジーなことが起きる。もう、何でもアリだ。そんな世界への対処法のひとつが、現実よりも狂った、破壊的で奇妙な映画を大勢で90分間楽しむこと。映画が終われば各々が家に帰り、おいしい食事を食べ、ぐっすりと寝る。子どもと遊び、愛する人に会い、好きな本を読む。目の前で世界が壊れてゆくのは悲しいが、気分転換にホラー映画を観て、劇場を出たら恐ろしい状況とは縁が切れる。自分でコントロール可能な恐怖体験は健康的だ。現代社会においてホラー映画は一種の“良薬”なんだ。
――監督が役者として出演した『Nope/ノープ』(2022年)のジョーダン・ピールや、アリ・アスターも自身のパーソナルな部分を作品の根底に据えた作り手だと思います。彼らにシンパシーを感じますか?
オズグッド・パーキンス監督 (C)2025 C2 MOTION PICTURE GROUP, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
パーキンス監督:アリと面識はないが、ジョーダンとは親しいよ。僕らが大舞台で活動できるのは稀有なことで、ラッキーだと自覚している。同時に素晴らしい特権には責任が伴うし、恩返しを果たす責務もある。少なくとも僕は、観客が喜ぶものを目指している。コンテンツに溢れた世界で“声”を与えられた立場として、何を生み出すか慎重に考えて、自分の作品と向き合いたいんだ。
(取材・文:山崎圭司)
映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』は公開中。