筒井真理子、生きづらさを抱える主人公の「人を信じる力」に共鳴 【主演映画『もういちどみつめる』インタビュー】

インタビューの終盤、「人を信じるとは何か」という話題になると、筒井はふと言葉を詰まらせた。そして、戦争や紛争の話に触れながら、不意に上を向き、静かに涙をこぼした。
「例えば世界で今も戦争や紛争があるように、一国のリーダーが間違ったりすることもある。でも、その一方で、苦しい状況の中でも人のためにきれいに生きて死ぬ人もいる。そういう人間の尊厳は信じていたいと思うんです」。
ニュースキャスターの安藤優子が語っていたエピソードに触れながら、筒井は続けた。
「『戦争中、子どもが水を汲みに行って、自分は飲まずに家族に与えた。その子どもの姿に人間の尊厳を見た』と。そういう瞬間があるんだと思うんですね」。
そして、最も尊敬する人物として挙げたのは、国連難民高等弁務官として尽力した緒方貞子さん。
「テロリストの銃が向けられている中に何も持たずに交渉に行く方で、一緒にコーラなんか飲んじゃうんです。私がそんなに強くなれるかわからないけど、そういう人間の尊厳を信じたい」。
彼女の言葉は静かだが、確かな意志を帯びていた。典子を通して描かれる“人を信じることの痛み”と“信じ続ける勇気”は、まさに筒井真理子自身の生き方にも重なるのだろうか。
人はどこまで他者を信じられるのか。赦すことは可能なのか。『もういちどみつめる』の投げかけた問いに対し、筒井はこんな思いを語った。
「人はみんな違う世界を見ている。その違いを恐れず、受け入れることが、たぶん信じるってことなんだと思います」。
(取材・文:田幸和歌子 写真:米玉利朋子[G.P. FLAG inc])
映画『もういちどみつめる』は、11月22日より全国順次公開。

