松田美由紀&原田美枝子、出会いから40年超 監督&主演として向き合い感じたお互いの魅力
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――その原石と砂金が出会ったことから、素敵なラブストーリーになるのかと思いきや、騙し合いもあり、ピュアな交流もある、二人の関係性は新鮮でした。物語のヒントとなったのは、松田監督のお子さんの友人のエピソードだそうですね。
松田:随分前の話になりますが、息子の友達の実話なんですね。ある年配の女性から「私はたくさんのお金を持っている」と言われて、お金をチラつかせられて、誘われてずっと付き合ってるんだけど、旅行に行った話や遊びに行った話、生命保険のことなどいろいろ話すだけで、一向にお金を差し出してくれないという話があって。それがすごく面白いなと思って、いつか物語にしたいと考えていたんです。『MIRRORLIAR FILMS』のお話は何年か前からいただいていたんですけど、これともう1本全く違う話を作っていたんですね。
原田:私が最初に読ませていただいた本は全く別の話で、一人芝居のような脚本でした。演じるのは難しいなと思いました。そこから1年くらい経って、今回の『カラノウツワ』の本が届き、これなら展開に広がりが出ると感じたんです。
松田:私は「どうせ俳優が監督やると、雰囲気しか撮れないでしょ」と言われたくなかった。ドラマをちゃんと作りたいなと思っていたので。
――もっと二人の背景や過去、その後を見たくなる一方で、短編だからこそ、セリフのない箇所にも情報量がみっちり詰まっていて、想像をかき立てられるところもありますね。
松田:短編の面白さはやっぱり「描かなくていい」ところだと思うんですよ。長編だったら、ストーリーがしっかりないと、1時間半とか2時間とか持たせないといけないけど、短編は言葉の間合いで語れるから。
『MIRRORLIAR FILMS Season8』「カラノウツワ」場面写真 (C)2025 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
――この女性・文子は、原田さんを投影して描かれたキャラクターなんですか。
松田:投影したわけではないんです。でも、原田美枝子さんが持っている深い深い陰の部分も、ピュアな部分も、文子を演じる上で適役だと思いました。それに、他の俳優さんを見ると、「演じる」匂いがする方が多いんですよね。それで私はすごく興ざめするんですけど、原田さんの場合は原田美枝子を捨てて、文子になってくれているのがすごく嬉しくて。撮影している時はもう原田美枝子さんはいなかったです。
原田:文子はなぞの女性なんですよね。銀行にお金がたくさんあるのかもしれないし、お金持ちの家で育って家が没落していって、その中で大人のうごめく姿を見てきて、「お金なんて」と思っているのかもしれない。あるいは、本当にただただずっとお金がなかったのかもしれない。わからないじゃないですか。そもそも文子が住んでいる家自体が嘘かもしれないし。
松田:生活感が全くないからね。
原田:これがもし本当だとしたら、すごく孤独だなと思うんですよ。でも、土井くんという男の子に会えたこと一点だけで、この後ずっと生きていけるかもしれない。
松田:短編だからこそ、色々な角度から見えるように工夫しているんです。猫がじゃれているところを文子が冷静に見ている顔とか。全然笑ってないんですよね。他に、キーワードとして、子どもとおばあちゃんが遊んでいる様子を2人でチラッと見るところもある。そうした虚実も含めて2人の世界があるというのを作ってみたんですね。

