アカデミー賞ボイコット女優が語るトランプ大統領への怒り「とても小さな人間」
入国制限や人種差別の壁を越えて“作品”として高く評価された本作。物語は、何気ない日常が、謎の侵入者による暴行事件によって一変していくが、「この映画は、イランに特化した問題ではなく、世界中、どこでも起こりうる出来事」とタラネは主張する。ファルハディ監督も、「イランの女性には、“ガードは固く、身体や家庭は隠すもの”という考え方はあるものの、今回はそれを特に意識して描いているわけではない」と語っているが、「戦争の多いイランは“暴力”をとても身近に感じている国。平和な日本の皆さんが、この夫婦の在り方に“違和感”を持つとしたら、生まれ育った国の違いがあるかもしれない」と懸念するタラネ。
ただ、「一つ言えるのは、“復讐”というものは、どこの国の人間の心の中にも芽生えるもの。その状況に置かれたとき、どんな行動に出るかは誰にもわからない。この作品では、暴行事件の犯人に対して、夫はどんどん復讐心を募らせていきますが、実際に被害を受けた妻は、“暴力を暴力で返してはいけない”と主張する。ここに強いメッセージが隠されていると思います。つまり、さまざまな争いで苦しんでいるわれわれが暴力で返してしまったら、彼らと同じになってしまうのです」と力説した。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『セールスマン』は6月10日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。