中谷美紀「限界まで演じる」 女優としてにじませる“ストイックさ”と“美意識”

「両手放しで喜んでというよりは、おそるおそるでした。とても難しい作品でしたので、私などには演じきれないのではないかと」と、オファー時の心境を語る中谷美紀。その作品とは、中谷にとってWOWOWドラマW初主演となる、東野圭吾原作のミステリー『片想い』のこと。女性として性を受け、現在は男性として生きる美月が、大学時代の仲間に「人を殺した」と衝撃の告白をしたことから、物語が展開していく。
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髪をバッサリ切り、筋トレをして性同一性障害を抱える美月役に臨んだ中谷。放送決定のニュースが流れるや、ビジュアルのかっこよさも話題になった。「ジムに通っているんですが、そこでよくすれ違うご婦人に、髪を切ったあと、初めて話しかけらたんです。『いいわよ、その髪型。似合ってるわよ』って」と、身近な所でも反響があったと笑う。しかし、役作り自体は難しかった。
これまでに『電車男』『嫌われ松子の一生』『自虐の詩』『繕い裁つ人』など数多くの作品で、観る者をその世界へと誘ってきた中谷。初めての役柄、難しい役柄への挑戦であればあるほど、武者震いするのではないかと思ったところに、冒頭での「おそるおそるでした」との発言である。さらに自分には「技術がそんなにない」と口にする。
「だから一生懸命演じるしかないんです。この役に限ったことではありませんが。とにかく頑張るしかない。毎回、自分の技術が追いつかないのですけれど、理想としているものだけは高いんですね。だから限界まで演じています。一生懸命やらないとできないんです」とトップで走り続ける女優としてのストイックさをにじませた。
美月には特に歯がゆさを感じることが多かったというが、役柄的にはプラスにも働いた。「私がどんなに筋トレしても、低い声を出しても、本当の男にはなれない。それがもどかしくてもどかしくて。ただ美月のセリフに『どうあがいても本物にはなれない』というセリフがあるので、それを拠り所に、自分がこの役になり切れないというもどかしさと、美月の男性になり切れないもどかしさを重ねて演じました」。