バイプレイヤー・大倉孝二が抱える“ちゃんとした俳優”になっていく恐怖感

愛する人を守るため、自分の名前さえ捨て去った3人の男たちの純愛(?)を描いた映画『君が君で君だ』。松居大悟が監督・脚本を務めたこの作品で、「坂本龍馬になりきった男」を演じたのは近年ドラマでもその魅力をますます発揮している大倉孝二だ。その独特なたたずまいで舞台から映像までボーダレスに活躍する彼が、この作品に出た“理由”とは?
【写真】『君が君で君だ』大倉孝二インタビューフォト
「理解できなかった、ですね。どうしてそんなことになるのか、そんなことを言うのか……よくわからなくて」。
この映画は、片思いの女の子を守るため彼女が好きな尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬になりきった3人の男(池松壮亮、満島真之介、大倉)たちの物語。と言えば説明は簡単なのだが、こんなシンプルな言葉では表せないような濃密な物語が画面上では展開されてゆく。なにせ、最初に脚本に触れた際の印象を聞くと、メインキャストがこの答えなのだから。
「だから最初は不安になったんですけど(笑)、でも細かいことはさておき、監督が『僕らみたいな若いところに、大倉さんに飛び込んで来て欲しい』と。僕にとって、そこが今回一番重視するポイントだったんですね。だからどう見えるとか、出来上がりがどうなるとかは考えず、一生懸命やってあとは監督に任せよう、と」。
ドラマ『バイプレイヤーズ』や映画『アズミ・ハルコは行方不明』などで注目が高まっている松居監督は、大倉よりも11歳年下。
「“自分より若い人たちの作るものに出たい”その思いが強かったんですよ。そういうのをやらないと、違う世代の人達の考えていることを知ることができないなと」。
しかしながら、撮影現場は思った以上に過酷だったとか。
「みんなそればっかりインタビューで口にしてますけど(笑)。真夏に窓を閉めきった本物のアパートで撮影してて、逃げ場もない。基本長回しのシーンが多いから、うまく行かなきゃ何回もやり直す。みんな疲弊してどろどろになっていくんですよね。池松君に『とにかく毎日、大倉さんが異常に早く帰ってた』って言われたんですけど、もうね、早く帰りたくて仕方なかった(笑)」。
役者同士の即興性も活かしたその濃密すぎる映像は、実際の映画でぜひ確認してほしい。