なぜ惹かれる? 『雨を告げる漂流団地』スタジオコロリド、観客の心を掴む3つのポイント
9月16日に公開予定のアニメ映画『雨を告げる漂流団地』。第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した『ペンギン・ハイウェイ』(2018)や、世界30ヵ国以上で再生回数の多い映画ランキングTOP10(Netflix)に入った『泣きたい私は猫をかぶる』を手掛けた、スタジオコロリドの長編アニメ映画第3弾だ。最新作公開へ向け、今回は同社がなせ「心を掴む作品を生み出し続ける」のか、3つのポイントを紹介する。
【写真】鮮やかな色彩が印象的 『雨を告げる漂流団地』場面写真
■日常から非日常へ “マジックリアリズム”の魅力
映画『雨を告げる漂流団地』場面写真 (C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
“マジックリアリズム”は、スタジオコロリドの特徴的な作風。観客と同じ日常から始まる物語が、いつの間にか日常の中に潜む非日常と混ざり合い、不思議な世界観を作り出す演出。
『ペンギン・ハイウェイ』では、主人公・アオヤマ君が住む郊外の街に突如としてあふれ始めるペンギンや、森の奥にある草原に浮かんだ透明な球体「海」の存在。『泣きたい私は猫をかぶる』では、主人公ムゲの「かぶると猫へと姿を変えることができる」という不思議なお面によって引き起こされる魅力的な世界観が印象的だ。
最新作『雨を告げる漂流団地』は、小学6年生の航祐と夏芽たちが以前暮らしていた団地ごと大海原へ漂流してしまうという、“マジックリアリズム”の境地とも言える設定のストーリーが展開される。どうして団地は漂流しているのか? 航祐たちは無事に元の場所へ帰ることが出来るのだろうか?漂流する団地が生み出すドラマにも注目したい!
■繊細で温かみのあるキャラクターが織りなす物語
映画『雨を告げる漂流団地』場面写真 (C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
世代を選ばない温かみのあるキャラクターデザインも、スタジオコロリドの特徴のひとつ。柔らかな線と温かな色彩で描かれたキャラクターが織りなす物語は、だった誰もがそうであった子どもの頃の気持ちを思い出させてる。
『ペンギン・ハイウェイ』では、小学4年生のアオヤマ君の瞳を通して知らないことを知る楽しさを、“果てしない世界の謎”と“冒険”としてみずみずしく描く。『泣きたい私は猫をかぶる』では、猫の世界を通して繰り広げられるムゲの「自分」を探す物語が紡がれてきた。
『ペンギン・ハイウェイ』と最新作『雨を告げる漂流団地』の監督を務めたスタジオコロリドの中心的クリエイター・石田祐康監督は、特に「子どもの気持ち」を大切に描くことに定評がある。最新作でもサバイバルを通して描かれる子どもたちの葛藤や成長を丁寧に描き出すだろう。
■ドラマのカタルシスと同期して躍動する映像
映画『雨を告げる漂流団地』場面写真 (C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
丁寧に描いてきた子どもたちの感情を一気に解き放つクライマックスを、躍動感あふれる映像で描き出すのもスタジオコロリドの持ち味。石田監督も、学生時代に制作した短編『フミコの告白』から疾走感のある映像を得意としている。その圧倒的な疾走感とキャラクターの感情が一致する心地よさは、観客の心を掴んできた。
持ち味を生かした映像、物語、そして“マジックリアリズム”で、アニメファンのみならず映画ファンからも注目を集めるスタジオコロリド。『雨を告げる漂流団地』でも、彼らが誘う非日常に期待したい。
アニメ映画『雨を告げる漂流団地』は9月16日公開。