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『ムカデ人間』ディーター・ラーザーの遺作、東欧ダーク・ラブストーリー『ノベンバー』公開決定

映画

 映画『ムカデ人間』でカルト的人気を博したドイツ人俳優ディーター・ラーザーさんの遺作で、2018年アカデミー賞外国語映画賞のエストニア代表に選出された映画『ノベンバー』が、10月29日より公開されることが決定。予告映像、日本版ティザーポスター、場面写真が解禁された。

【動画】モノクロームで描く甘美な悪夢『ノベンバー』予告編

 本作は、「死者の日」を迎える11月のエストニアの寒村を舞台に、世にも不可思議な純愛を描く東欧ダーク・ラブストーリー。原作はエストニアの作家アンドルス・キビラークの『レヘパップ・エフク・ノベンバー(Rehepapp ehk November)』。2000年に発表されると、エストニア内の全図書館において過去20年間で最も貸し出された本としてカルト的ベストセラーとなり、現在はヨーロッパ各国で愛読されている一冊だ。

 月の雫の霜が降り始める雪待月の11月、「死者の日」を迎えるエストニアの寒村。戻ってきた死者は家族を訪ね、一緒に食事をしサウナに入る。精霊、人狼、疫病神が徘徊する中、貧しい村人たちは「使い魔クラット」を使役し隣人から物を盗みながら、極寒の暗い冬を乗り切ろうと思い思いの行動をとる。そんな中、農夫の娘リーナは村の青年ハンスに想いを寄せていた。ハンスは領主のドイツ人男爵の娘に恋い焦がれる余り、森の中の十字路で悪魔と契約を結ぶ―。

 監督のライナー・サルネは“全てのものには霊が宿る”というアニミズムの思想をもとに、異教の民話とヨーロッパのキリスト教神話を組み合わせ映画化。フォークロア、ゴシック、ロマンス、ブラックユーモア、そして愛と哀愁を縫い合わせ詩情あふれる物語に仕上げた本作は、その独創性にあふれた映像美が高く評価され、2018年のアカデミー賞外国語映画賞エストニア代表に選出された。日本では、同年に開催された第10回京都ヒストリカ国際映画祭「ヒストリカワールド」部門で上映され好評を博した。

 儚い恋心に揺れる農家の娘リーナを演じるのは、レア・レスト。喜び、ほろ苦さ、痛みなど、複雑な要素を内包するキャラクターを魅力的に演じ、作品を別次元に導いた。男爵の謎めいた娘役には、パフォーマンス・アーティストとして活躍するジェット・ルーナ・エルマニス。エキゾチックな容姿の無垢なキャラクターを演じ、女優デビューを飾った。この2人の美しいゴシック・ヒロインの気を引こうとする農家の青年ハンス役は、ヨルゲン・リク。憂鬱な表情や愛に満ちた笑みを浮かべ、ストーリーを思いがけない方向へ誘う。

 そして男爵役には、『ムカデ人間』(2010)のヨーゼフ・ハイター博士役でカルト的人気を得た、ドイツの名優ディーター・ラーザー。スパンコールのジャケットを身につけ、凛とした男爵の力強さと痛々しさを絶妙なバランスで演じている。2017年に撮影した本作が、2020年に逝去したディーターさんの遺作となった。そのほか、魔女、幽霊、得体が知れない老婆など、脇を固める登場人物の多くは役者経験のない村人が務め、悪夢的世界を彩っている。

 夢のようなモノクロームの世界を撮影したのは、マート・タニエル。その漆黒の深みと白い雪のような映像美は世界から絶賛され、トライベッカ国際映画祭、ミンスク国際映画祭での最優秀撮影監督賞、アメリカ撮影監督協会スポットライト賞など、名誉ある賞を多数受賞した。

 予告映像には、コントラストの高さが印象的なモノクロ映像の中、登場人物たちが自身の欲望をむきだしにする姿が映し出されている。「お前にも愛する人が見つかるといいのだけれど」と語りかけられ、「見つけたわ」と答えるリーナ。男爵の娘を一目見て、恋に落ちるハンス。「彼の妻になりたい。ハンスの心を私へと振り向かせたい」と訴えるリーナに、魔女は「できることはひとつだけ。その女を殺すしかないよ」と答える。そして映像は、不穏な展開を予感させる場面がたたみかけるように続き、最後は「悪魔との契約、魂の代償ー」というキーフレーズで幕を閉じる。

 日本版ティザーポスターは、黒いヴェールをかぶったリーナの美しい顔をアップで切り取ったものとなっている。

 映画『ノベンバー』は、10月29日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

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