浅野忠信の魅力さく裂! 『レイブンズ』恋する・怒る・ダメ夫・孤独・尊い姿を切り取る本編映像公開
関連 :
■浅野忠信
――ギル監督について。
とても優しい方でした。僕だけではなくて、スタッフみんなに対して尊敬の念を持って接してくれていたので、とてもやりやすかったです。役のことだけでなく、全然関係ない音楽の話や日本、イギリスのこと、いろんなことを話しました。僕もちょっと英語もまだままならないことがありますが、それでも諦めずにずっと話しかけてくれた、そういう中で監督の深瀬に対する思いを汲み取ることができたので、本当に役にとってものすごく大きいことでした。
他の国の人と仕事をするときに、言語がわからない中で、僕のやっていることがちゃんと通じた、これは勝ちだなと思うんです。ありがたいことに、監督がその都度感じてくれて、そのことを僕にも話をしてくれていたので、そういう意味では、本当に手応えがありました。
――深瀬父子の関係について。
やはり父からの影響は大きかったように思いました。父とは違う自分を見つける中で父に認められることも望んで結局はとても大きな支えになっていたように思いました。
■トモ・コスガ(深瀬昌久アーカイブスディレクター)
深瀬昌久の作品「鴉」は、オリジナル版写真集の発刊から30余年が経った現在、写真史における決定的な作品群のひとつに数えられると同時に、写真集の分野においても最高峰と評されている。しかし賞賛の数々と時の経過によって覆い隠され、置き去りになっていることがある。それは、深瀬がなぜ鴉というモチーフに執着したのか、という根本的な疑問を説明づける興味深い事実の断片だ。
この鴉というモチーフは、彼が生涯を通して耐え続けた実存的苦悩と寂寥を反映したものであるというだけでなく、芸術の名の下において鴉に自身を重ね合わせることで寂寥を増幅させ、果てには狂気に満ちた芸術的表現へと陥らせるものであった。1992年、深瀬は行きつけのバーの階段から転落する。この後遺症によって自らの意識を彷徨わせることとなり、医学的に見ても孤立した状態を以後20年間にわたって続けた。深瀬は自らが手にしたカメラによって囚われた1羽の鴉となり、その最も代表的な写真集の表紙に宿ることで不滅の存在となったのだ。