ベルリン2冠で話題の監督「かつてない美しい殺害シーン」 『薄氷の殺人』に手応え

第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞(作品賞グランプリ)と銀熊賞(主演男優賞)をダブル受賞した『薄氷の殺人』のティーチイン付き試写会が都内にて行われ、ディアオ・イーナン監督が登壇。観客との質疑応答を交えながら、作品について熱く語った。
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本作は、中国北部のある地方都市で起きた未解決の連続猟奇バラバラ殺人事件をめぐるクライムサスペンス。事件を追う元刑事の男が、被害者たちと関わりを持つ美しい未亡人に惹かれながらも真相に迫るさまを、独創的な映像美で描く。『ライジング・ドラゴン』のリャオ・ファン、『GF・BF』の女優グイ・ルンメイが魅せるリアルな演技も必見。
フィルムノワールの新境地に挑んだイーナン監督は、「バイオレンスな部分をどう描写するか、とても長い年月をかけて模索した」と振り返る。最終的に「最もシンプルで、最も美しい」という理由からアイススケートの靴の刃を凶器として採用。「長回しの手法によって、かつてない美しい殺害シーンを撮ることができた」と声を弾ませる。
また、銀熊賞に輝いた主演のリャオをはじめ、役者のリアルな演技も本作に深みを与えているが、これについてイーナン監督は、「まず、役者たちには、『演技しないでくれ』とお願いした。自分の持っているものを自由に出して、セリフをできるだけ削ぎ落してほしいとも」と、意外な答え。
さらに、「わたしは、技術だけが際立つ演技が好きではない。大切なのは燃える心を内包した静かな佇まい」と持論を展開。「(映画の鍵を握る)未亡人役にグイを選んだのも、わたしが求めていたものを持っていたから。清楚な外見と複雑な内面が綱引きをする彼女の雰囲気に惹かれた」と絶賛した。
映画『薄氷の殺人』は2015年1月10日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。