池上純哉、『孤狼の血』脚本家インタビュー「主人公が悪に染まる迷いや変化を描いた」

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白石和彌がメガホンを取り、役所広司と松坂桃李ら豪華キャストが共演する『孤狼の血』の撮影現場取材会が、5月某日に物語の舞台である広島県内で行われ、脚本家の池上純哉が囲み取材に出席。『日本で一番悪い奴ら』でも白石監督とタッグを組んだ池上に、脚本を書く上で意識した点や、原作からの脚色について話を聞いた。
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第69回日本推理作家協会賞を受賞した柚月裕子による同名小説を実写化した『孤狼の血』。暴対法成立以前の広島を舞台に、ヤクザと癒着していると噂される刑事・大上(役所)と、彼の下で働く新人・日岡(松坂)が、苛烈な抗争に巻き込まれていく姿を描く。キャストには、石橋蓮司、江口洋介、真木よう子らが名を連ねる。
白石監督と『日本で一番悪い奴ら』に続いてタッグを組んだ池上に、オファーを受けたときの心境を聞くと、「また悪い警察の話を書かなきゃいけないということで、ちょっとどうなんだろう? という話もあったんです」と苦笑い。二作品の違いについては、『日本で一番悪い奴ら』の主人公が悪に染まる過程に迷いを抱かなかったことを引き合いに出し、「(本作は)迷っている部分を描ける映画にできるんじゃないかと思いました」と説明する。
「迷いの部分とも通じるんですけど、頑張ってまっとうな警察官になろうとしていた日岡が、大上みたいな破天荒な刑事と出会って、どういう風に変わっていくのか? というところはちゃんと描きました」と力を込めて語る池上は、観客を考慮した結果、白石監督と2時間以内の映画にすることを決めていたそう。原作で矢継ぎ早に起こる抗争の模様などは省略したというが、「成長なのか堕落なのかわからないですけど(笑)、日岡の人間らしい生き様に焦点を当てられると良いなというイメージでした」という言葉からは、人物描写にしっかりと意識を注いでいることが感じられた。
影響されることを避けるために、『仁義なき戦い』などの東映の名作は見返さなかったといい、「原作の一番のミステリーが、なかなか映像化しにくいものだったので、そこは映画なりの謎解きを入れればいいかなと。とにかく、原作が描こうとしている大上と日岡の関係だけは外さずに書いていけば大丈夫かなと思いました」とも明かす。果たして、ヤクザが繰り広げる抗争を通じて、大上と日岡の関係はどんな結末を迎えることになるのだろうか? 今から公開が待ち遠しい。(取材・文・写真:岸豊)
映画『孤狼の血』は2018年春公開。