吉祥寺シアター・小西力矢、劇場職員と劇団主宰の2つの視点から見る可能性「人生を託せる場所が必要だと感じた」
8月14日より吉祥寺シアターにて、吉祥寺ファミリーシアター2026『星の王子さま』(脚本・演出・音楽:小西力矢)が開幕する。――「本当に大切なことは、目に見えないんだ」星々とその光のように時を越えて語り継がれる物語の力、創作に込められた想い、吉祥寺ファミリーシアターの魅力、そして今後の展望とは? しあわせ学級崩壊の解散後、劇場職員として公共劇場の新たな在り方を模索しながら、自身の表現の個性と可能性を追求する小西力矢(吉祥寺シアター/まばゆいクラブ)に話を聞いた。
【写真】劇場職員でありクリエイター 小西力矢、インタビューショット
吉祥寺ファミリーシアターは吉祥寺シアターの主催公演で、子どもから大人までみんなで演劇を楽しめる夏休みの恒例企画。今年は、サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』を小西力矢の情緒と疾走感溢れる脚本・演出・音楽と、加藤睦望(やみ・あがりシアター)、金本大樹(まばゆいクラブ)、徐永行(ザジ・ズー/サンバーチャイチャイ/さるさるさる松井絵里)、田久保柚香、新部聖子(少年王者舘)、端栞里(南極)、宝保里実、村山新(まばゆいクラブ)の今をときめく個性豊かな8名とともに鮮やかに彩る。
■「だれか」ではなく「あなた」へ“劇場だからこそ見られる夢”を
――『スーホの白い馬』、『銀河鉄道の夜』に続き、小西さんが吉祥寺ファミリーシアターを手がけられるのは今年で3回目です。まずは、その経緯からお聞かせ下さい。
小西:吉祥寺ファミリーシアターが始まったのは2018年で、年間の主催公演の中でも割と大きな恒例の公演として育んできたという歩みがあります。そんな中で、僕が脚本・音楽・演出などをやらせてもらうようになったのは2024年からでした。僕は、しあわせ学級崩壊という劇団の解散とほぼ同時期に吉祥寺シアターの職員になったのですが、支配人から「劇団を主宰していたのだから、劇作ができる劇場職員という強みをファミリーシアターで活かしてみたら」と提案をいただいて、挑戦することにしました。そうした背景もあり、しあわせ学級崩壊で演劇を作っていた時となるべく同じような気持ちで、自分がやりたい表現や創作を忠実に突き詰めていけたらと思って取り組んでいます。
――作品の選定も小西さんがされているそうですが、どういったことを意識して選んでいるのでしょう?
小西:劇作に携わる以上は、自分の個性や世界観を面白く表現できる作品を選びたいと思っていて、今回も過去作と同様にそのような気持ちで『星の王子さま』に決めました。クリエーションに向かう姿勢は劇団で作品を作っていた時と概ね変わらないのですが、受け取ってくれる人の数を少しでも多く増やすことや間口を広げることが「ファミリーシアター」という取り組みだとも思っています。
僕がその上で大事にしているのは、ゾーニングのようなものをなるべくなくすこと。もちろんお子さんも対象ですし、音楽の音量や空間のデザインなど、アクセシビリティ面も含めて工夫は凝らしているのですが、「子どもが一番楽しめる、子ども向けのものを作ろう」とは思っていないんです。つまり、特定の誰かに向けた作品づくりをするのではなく、多様な観客がそれぞれの在り方で受け取れるような作品づくりをするということ。それが僕の思う「ファミリーシアター」なんですよね。演劇に初めて触れる子どもにも、普段から演劇をよく観ていて自分のこれまでの作品を追ってきてくれているような人にも受け取ってもらえる作品にできたらと思います。
――確かに、ファミリーは親子だけではないですし、子どもから大人まで多様なお客さんがいらっしゃいます。ちなみに、物語として『星の王子さま』を選ぶに至るには、どんな理由があったのでしょうか?
小西:個人的な話なのですが、僕はメンタルが柔らかいというか、かなり傷つきやすい人間でして…(笑)。しあわせ学級崩壊の演劇も派手にコラージュはされていたのですが、核にはそういったセンシティブさがあり、純粋な精神世界を表現することに苦心してきました。そうした自分の特質に『星の王子さま』の哲学的な物語性がマッチしているように感じました。あと、やはり劇場職員としては、初めて演劇を観る人に「劇場」という場所を好きになってもらいたい。吉祥寺シアターはブラックボックスで、慣れている人にとっては普通のことかもしれないけど、不慣れな方にとっては怖かったり、不安を感じるかもしれないと思っていて…。だからこそ、暗闇だから見える光や、夜だから生まれる想像力みたいなものを大切に、“劇場だからこそ見られる夢”を見せたいと思っているんですよね。そういう意味でも『星の王子さま』はぴったりの作品だと思いました。
■言葉を輝かせる音楽の追求、キャスティングへの思い
【公演概要】
吉祥寺ファミリーシアター2026『星の王子さま』
8月14日~16日 東京・吉祥寺シアター
■原作:サン=テグジュペリ
■脚本・演出・音楽:小西力矢(吉祥寺シアター)
■出演:
加藤睦望(やみ・あがりシアター)、金本大樹、徐永行(ザジ・ズー/サンバーチャイチャイ/さるさるさる松井絵里)、田久保柚香、新部聖子(少年王者舘)、端栞里(南極)、宝保里実、村山新
<公式サイト>https://arte-friends.com/event/kichi-family2026/