新木宏典主演『てらこや青義堂 師匠、走る』開幕! 笑いもアクションもたっぷり“夏休みにぴったり”な作品に
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寺子屋の師匠と、その教え子である筆子たちを中心に描く、新木宏典主演の舞台『てらこや青義堂 師匠、走る』が8月14日に、東京・池袋 サンシャイン劇場にて開幕した。直木賞作家・今村翔吾の青春時代小説を、青木豪の作・演出で舞台化した本作は、夏休みにぴったりな一作に仕上がっていた。初日を前に実施されたゲネプロの様子をレポートする。
【写真】夏休みにぴったり! 『てらこや青義堂 師匠、走る』ゲネプロショット
時代劇でありながら、くすっと笑えて爽やか。観終えたあとには、心に温かさが染み渡っていた。
物語の舞台は、江戸・日本橋。かつて凄腕の公儀隠密として恐れられた過去を持ちながら、今は寺子屋の師匠として生きる坂入十蔵を、新木宏典が演じる。
新木はコメントで、この役が自身の生き方に重なると語り、「1人で生きてきた中で見出した答えを次世代へ伝え残す」そんな思いに触れていた。事実、先輩として次世代へ受け継ぐことを意識した新木の視線は、自然と十蔵のそれと重なっていく。全編を通して、十蔵が筆子たちや大切に思う家族へ向ける温かなまなざしが一貫してあり、それが観劇後の、痛快な晴れ模様のような感覚につながっているのだろう。原作者の今村も、作家業の前に携わっていたダンスインストラクターとしての実体験が物語に含まれていると明かしている。実体験に基づいた教え子たちへの優しい視座が、新木を通して見事に体現されていた。
先生の魅力が引き立つのは、魅力的な生徒がいるからこそだ。筆子の4人――生駒千織(八木美樹)、月岡鉄之助(小島歩琉)、丹色吉太郎(大熊蒼空)、源也(村山暁)は、それぞれ個性が強い。紅一点ながら女扱いを嫌うしっかり者で博識な千織は、誰よりもいつも冷静。率先して場を賑わすムードメーカーの吉太郎は、商人根性たくましく、ちゃっかりした性格に度々笑わせてもらった。源也は少しおっとりしたところもあるが、大工の息子らしい発明家的なポジションで、子どもの発想力の豊かさを担う。そして剣術で腕の立つ鉄之助は、まっすぐで一生懸命。小島歩琉は、技術というより気持ちで必死に食らいつくさまが、そのまま鉄之助らしさにつながっていた。
この4人がのびのびと舞台上を駆けまわることで、作中では直接描かれない、十蔵が積み重ねてきた師匠としての時間が浮かび上がる。彼らのなかに先生の教えが根付いているからこそ、観客もまた十蔵の教えに触れることができる、という構造だ。大人にとっては「教えを未来へつないでいくとは、こういうことなのかもしれない」という気づきがある。一方で子どもにとっては、アクションとしての面白さや、かわいい十蔵の相棒犬の登場にワクワクでき、逃げずにチャレンジする筆子たちの姿から、何かを得られるのではないだろうか。
筆子たちの成長を、別の角度から印象づけるのが、丹色福助(伊与勢我無)ら父親たちの存在だ。子を案じながらも、かわいい子には旅をさせよと手を離す勇気を持ち合わせた彼らのコミカルなやりとりが、子どもたちがたくましくなっていく姿をより鮮やかに映し出していた。
本作のもう一つの見どころが、忍びのアクションだ。影を使った演出や、飛び道具の動きをスローモーションの芝居で表現するなど、時代劇の枠にとどまらない仕掛けが凝らされている。新木の安定した殺陣で魅せる一方、筆子たちが力を合わせて敵に立ち向かうシーンには、思わず笑ってしまうような遊び心も。そして、十蔵の前に彼の過去を知る者として立ちはだかり、かつアクション監督も務めた南誉士広の存在感が、殺陣の一つひとつに確かな重みを与えていた。
十蔵を語るうえで欠かせないのが、睦月という女性の存在だ。ある事情から十蔵と離れざるを得なかった睦月だが、その人柄がとにかく魅力的。忍びであった十蔵との馴れ初めを描く回想シーンでは、彩みちるが生み出した睦月なら、仕事一筋だった十蔵の心をほぐせるだろう、と思わせる説得力があった。彩の、軽やかでいて華のある歌声を披露するシーンもあるので、お楽しみに。
コメディリリーフとして活躍するのが、景春を演じる一色洋平。アクションのない役ではあるが、持ち前の身体能力を生かし、十蔵とのやりとりをなんとも賑やかに彩る。新たな時代劇として、その間口を広げる存在としても機能していた。加えて、兄としての懐の深さを示した姜暢雄演じる九兵衛、山本亨の骨太な芝居などが融合し、軽やかでありながら深みのあるバランスを成立させている。
「最上級のポジティブを皆さまにお届けできれば」とコメントしていた作・演出を手掛ける青木豪は、サブタイトル「師匠、走る」に違わぬ疾走感を、見事に舞台上へと立ち上げた。そこに、浅草を拠点に活動するレトロなロックバンド・浅草ジンタの音楽が絶妙にマッチ。時代劇らしい和のテイストがありつつも、型にはまらない軽快なサウンドが、作品をより軽やかにしている。さらに、セリフなしで音楽とダンスの融合から物語を生み出す梅棒(天野一輝/梅澤裕介)が振付に参加し、観るだけで楽しい感覚をプラス。時代物に不慣れな人でも、するすると物語を体感できる仕組みが整っている。そこに、たしかな新木の芝居が乗ることで、物語の核である“信じる心”を、観客は心で理解できるのだ。
笑いと涙、そしてアクションが詰まった、まさに夏休みにふさわしいエンターテインメント。時代劇になじみのない人も、家族連れも、それぞれの視点で楽しめる懐の深さが本作にはある。師匠から筆子へ、そして観客へ――受け継がれていく“信じる心”が、劇場を出るころには、きっと胸に温かく残っているはずだ。
舞台『てらこや青義堂 師匠、走る』は、8月30日までサンシャイン劇場にて上演。
【公演概要】
舞台『てらこや青義堂 師匠、走る』
■作・演出:青木豪
■出演:新木宏典 彩みちる 一色洋平
八木美樹 小島歩琉 大熊蒼空 村山暁 久保田直樹
鈴木幸二 伊与勢我無 南誉士広
姜暢雄 山本亨
下島一成 淡海優 小泉凱 中野貴文 結木雅
■会場・日程 2026年8月14日(金)~8月30日(日) 東京:サンシャイン劇場
■公演特設HP https://toei-stage.jp/terakoya-seigido/
■公式X @Toei_stages (https://x.com/Toei_stages)