東山奈央「終わりたくない」と思える幸せ 歌手活動10年の“轍”と虹の向こうに託した未来
声優歌手・東山奈央が、歌手活動10周年の節目に4thフルアルバム『OVER THE RAINBOW』をリリース。歌手活動休止前最後となるアルバムでありながら、その一枚を満たすのは“最後”の寂しさよりも、挑戦を続ける楽しさと、まだ見ぬ未来への期待だ。制作を共にした仲間、5人の声優との“ご褒美CD”、自作曲に託したファンへの思い、そして活動休止を決めた日の涙――。「終わりたくない」と思えるほど愛した10年を振り返りながら、彼女は虹の向こうにどんな景色を見ているのか。その胸の内を聞いた。
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■“終わる気がしない”ファイナルアルバム――10年目の虹を越えて
――4thフルアルバム『OVER THE RAINBOW』が完成した今、改めてどんなお気持ちですか?
東山:「ギリギリ、完成したー!」という感じでした(笑)。ありがたいことに、今年は声優として本当にたくさんの現場に恵まれています。私が大きな夢として掲げていた「日本武道館でライブをすること」と「プリキュア役として出演すること」。その2つが一気にかなうことになったからこその忙しさでもあったので、もちろん、すごくうれしいんです。
ただ、アルバムの制作期間はかなり限られていました。スタッフチームの皆さんに支えていただきながら、何とかレコーディングを進めてきたんです。時間がないからといって、クオリティーには妥協したくない。「ここまでにしておこう」と線を引くことなく、何度もやり取りを重ねて、締め切りギリギリ……というより、ちょっとアウトなくらいまで(笑)、みんなで粘りながら作り上げました。だから、完成したときは本当にほっとしましたね。「よし、これで発売日には間に合わせたぞ!」という感じでした。
――歌手活動10周年という節目に届けるアルバムですが、今作にはどんな思いを込められたのでしょうか。
東山:ひとまずのファイナルアルバムでもあるので、これまで支えてくださったたくさんの方への「ありがとう」という気持ちと、少しの寂しさを抱えながら制作しました。ただ、そうした感情を前面に押し出した作品にはしたくなかったんです。「最後だから」と集大成感を強く打ち出すのではなく、これまで音楽活動を通して大切にしてきた「皆さんに笑顔になってほしい」「楽しんでほしい」という思いを、この一枚でも貫きたくて。
聴き始めたら楽しくて、「あっという間に聴けちゃった!」と思ってもらえる。そんなアルバムを目指しました。だから、あまり“エモ”に寄せすぎず、最後の最後まで挑戦の手を緩めなかったんです。
これまでお世話になった作家の皆さんに加えて、今回初めてご一緒する作家さんにも参加していただきました。新しい出会いもあるからこそ、いい意味で「これで終わる」という感じがしない作品になったと思います。皆さんの「寂しいな」という気持ちを吹き飛ばせるような楽しさやサプライズを、たくさん詰め込みました。
――『OVER THE RAINBOW』というアルバムタイトルには、どんな思いが込められていますか?
東山:1stアルバム『Rainbow』以来、「虹」は私の音楽活動の中にずっと登場してきた大切な言葉です。今回は、1stアルバムで描いた虹を越えていく作品にしたいと思い、“越える”という意味を持つ「OVER」を付けました。
これまで「虹」は、聴いてくださる皆さんと、東山プロジェクトのみんなで一緒に作ってきたライブや笑顔、さまざまな景色の象徴でもありました。その虹のさらに“向こう側”へ進んで、新しい未来に会いにいこう――そんな思いを込めた、いくつもの意味が重なっているタイトルです。
今回のアルバムは虹色をテーマに新曲を作っているのですが、実は、その「虹」は曲順にも忍ばせています。たとえば、M3「door」はジャケットがピンクなので、同じくピンクのイメージを持つM2「キューティー・ランウェイ」と隣り合わせに。M4「Rosarium」の赤から、赤や緑のイメージを持つM5「とおりゃんせ」へ続き、「涙」から青を連想するM6「涙のレシピ」は、ブルーのM7「Encounter」と並べています。楽曲のテイストとして聴き心地がいいだけでなく、色彩としてもきれいなグラデーションになるように曲順を組んでいるんです。これ、我ながら結構うまくいったなって思っています(笑)。
最初は色を意識せず、音楽的な流れだけを考えて「この曲の次にこれが来たら気持ちいいな」と並べていました。でも途中で、「色もきれいにつながったらいいかも」と少し入れ替えてみたら、驚くほどピタリとはまって。聴き心地と色の両方が自然につながる、とても満足のいくトラックリストになりました。
