東山奈央「終わりたくない」と思える幸せ 歌手活動10年の“轍”と虹の向こうに託した未来
――初回限定盤Bの特典コラボCDには、東山さんと特に縁の深い早見沙織さん、安野希世乃さん、羊宮妃那さん、佐倉綾音さん、堀江由衣さんが参加されています。今回、この5人に声を掛けようと思ったのは、どんなところからだったのでしょうか。
東山:お声掛けできるのが5人だけだったので、ものすごく悩みました。声優としても、友人としても、大切な方がたくさんいますから。もちろん、「自分にとって大切な方」であることは共通しています。そのうえで、このタイミングでご一緒するからこそ、一緒に歌う意味がさらに深くなるだろうと思える方々にお願いしました。
――コラボする相手によって、東山さんの歌声や表現にも少しずつ違いがあるように感じました。まずは、早見さんと歌った「あの日のことば」からお聞かせください。
東山:たしかに、相手によって変わった部分はあると思います。さおさん(早見さん)とは唯一、同じ時間に隣り合うブースへ入り、「せーの」で一緒に歌うことができました。ほかの皆さんのレコーディングにもすべて立ち会いましたが、一緒のタイミングで歌えたのは、さおさんだけです。
「あの日のことば」は、もともと『本好きの下剋上』のタイアップ曲です。でも、さおさんとデュエットするという視点で改めて歌詞を読むと、まるで私たち二人について歌っているように感じられて。お互いに、より気持ちを込めて歌えたと思います。
さおさんも、感情を込めることや表現をとても大切にする方です。でも今回は、「一音一音をもっと突き詰めよう」というよりも、「二人で歌うこの時間が楽しくて幸せなら、それでいいよね」という気持ちになりました。その空気をそのまま形にできたら、もうそれで今日は花丸。そんな、いい意味でゆるっとした空気が心地よかったです。
普段は二人ともストイックに頑張るタイプだからこそ、「今日はそうじゃなくてもいいよね」と思えたのかもしれません。自分で言うのも何ですが……尊かったです(笑)。声優としてさまざまな作品で共演し、一緒に歌う機会もありましたが、ソロアーティスト同士のコラボは今回が初めてでした。アニサマなどでご一緒することはあっても、意外とコラボする機会はなくて。やっと念願がかなった、という感じでしたね。
――安野さんと歌った「真夜中の怪獣」は、お二人で歌うことでどんな一曲になりましたか。
東山:私は希世乃さんの前だと、かなり甘えてしまうんです。言ってしまえば“バブっている”ので(笑)。だからか、もとの「真夜中の怪獣」よりも少し幼く、童心に返ったような歌い方になりました。一方で、希世乃さんには少し“お姉さん味”もあって。二人それぞれの良さが、ちょうどよく引き出されたと思います。
それから、ハモりを新たに録っていただいたのは希世乃さんだけです。ほかの皆さんには主旋律を歌っていただきましたが、希世乃さんとは「ぽかぽかイオン」でも一緒ですし、「ワルキューレ」のメンバー同士でもあります。だからこそ、ここは少し音楽的に高度なこともお願いしたいと思い、ハモりまで録り下ろしていただきました。
――羊宮さんは、今回参加された皆さんの中では比較的新しいご縁ですよね。今回ご一緒したいと思ったきっかけを教えてください。
東山:以前から親交の深い方だけで5人を固めるのではなく、このタイミングだからこそご一緒したい方にも声を掛けたいと思っていました。羊宮ちゃんとは最近、『名探偵プリキュア!』の現場で仲良くさせていただいていて、お付き合いの年月はまだ長くありません。でも、私は羊宮ちゃんの人柄も表現力も大好きですし、一緒にいると多幸感に包まれるような女の子なんです。「いつか一緒に何かをしたい」と思っていた中で、今回がすごくすてきなタイミングだと感じました。
羊宮ちゃんは、お仕事で歌う機会はたくさんあると思いますが、「羊宮妃那」として歌う機会は、それほど多くなかったそうで。今回は自分自身の表現を丁寧に追求しながら、「月がきれい」と向き合ってくれたことが、とてもうれしかったです。声の属性は少し近いのかなと思っていました。でも、実際にデュエットしてみると明確に違っていて、お互いの個性が浮き立つんですよね。そんな発見もすごく楽しかったです。
――佐倉さんとの「グー」は、テンポも速く、歌いこなすのが難しそうな一曲ですよね。完成した佐倉さんの歌声を聴いたときはいかがでしたか。
東山:いやー、あやねる最高でした。今回は、皆さんそれぞれの魅力を最大限に引き出せる曲をお願いしたくて、それぞれに4、5曲ほど候補をお送りし、「この中でピンとくるものがあれば選んでください」とお伝えしていたのですが、あやねるだけは、候補曲すべてに感想をくれたんです。
――佐倉さんらしいですね(笑)。
東山:結局、「全部すてきで選べないから、奈央が選んで」と言ってくれて。そこで私が「『グー』をやりたい」と伝えたら、「実は私も歌いたいと思っていた」と返してくれました。私が何を選んでも、きっと全部肯定してくれたと思います。それくらい、あやねるはいつも私を全肯定してくれるんです。
あやねるは、私にとって特別な存在です。大事な節目には何度も力を貸してもらってきました。キャラクターソングライブのシークレットゲストに来てくれたり、節目ごとにコメントを寄せてくれたり。私はもらってばかりで、全然返しきれていません。今回も、誰とコラボするかを考えたときに、「あやねるなくしては」と思ってお願いしました。
そして、「グー」をものすごくかっこよく歌ってくれて、レコーディングも爆速で終わったんです。「あやねるって、できないことが何もないんだな」と思いましたね。私はライブでも何度も「グー」を歌ってきましたが、初めて「この曲って、こう歌えばいいんだ」と、お手本を見せてもらったような感覚でした(笑)。今回のコラボCDでは、私の歌も全曲新録しています。「グー」も最初に歌ったときより、さらにかっこよく歌えた気がしていて。あやねるに新しい表現を引き出してもらえて、本当に感謝しています。
――そして、堀江さんとは「イマココ」を歌われています。東山さんにとって憧れの存在でもある堀江さんに今回声を掛け、実際に歌声を受け取ったときは、どんなお気持ちでしたか。
東山:堀江さんにこの“ラブアタック”をしていいものか、最初は少しだけためらいました。だって、堀江さんはみんなが大好きな、みんなの青春であり、レジェンドじゃないですか。「私のような人間がお声掛けしていいのだろうか」とドキドキして。
実は、もともと担当マネージャーさんが同じなんです。憧れの方であると同時に、勝手ながらそこに少しシンパシーも感じていました。それに、ここでお願いしなければ、次にいつコラボできるか分からない。そこで「えいやっ」と思い切ってお声掛けしたら、とても気さくに快諾してくださいました。
レコーディングでは、堀江さんが驚くほど謙虚で。「何度でも歌わせてください! 何でもやります!」というくらい、ものすごくフレッシュな姿勢で来てくださったんです。私は「いやいや、堀江さんが歌のお上手なことは、私が知っています!」とお伝えしたのですが、それでも「私は歌にはまだまだ自信がないので、ちゃんといい作品になるように何回でも歌います。気合だけはあります!」とおっしゃって。大好きな方がこんなにもすてきな方だったことが、もう訳が分からないくらいうれしくて(笑)。
実際、どのテイクも素晴らしいのに、堀江さんの中には、きっとさらに高いところが見えているんです。「ここはもっとよくできるので、もう一度やらせてください」と自らおっしゃって、テイクを重ねてくださる。私はもう、どの歌声を聴いても幸せで。聴いているうちに、涙がぽろぽろこぼれてきました。
高校生の頃に堀江さんの歌をたくさん聴いていたことを思い出して。「あの頃の私が憧れていた方が、今度は私の曲を歌ってくださっているんだ」と思ったら、なんてすごい人生なんだろうって。夢のように幸せな時間でした。
――このコラボCDは、東山さんが声優として歩んできた時間と、そこで結ばれたご縁があったからこそ生まれた一枚ですね。
東山:本当に、“ご褒美CD”ですね。
