『天使にラブ・ソングを2』で圧倒的な歌声を披露したローリン・ヒルの現在
ウーピー・ゴールドバーグが主演するミュージックコメディの第2弾『天使にラブ・ソングを2』(1993)が今夜の金曜ロードショーに登場。本作で注目したいのは、シスターたちが手こずるヤンチャな高校生リタ・ワトソンを演じ、圧倒的な歌声を披露したローリン・ヒル。1000人以上のオーディションから選ばれ、当時まだ無名だった彼女のその後が気になるところ…。
【写真】ローリン・ヒルがかわいい! 『天使にラブ・ソングを2』場面カット&メイキング
ギャング絡みの殺人事件を目撃したしがないクラブ歌手デロリスが、修道院で匿われ、シスターのフリをすることになったから大変! おカタイ修道院のなかで、デロリスが巻き起こすドタバタを描き、世界中で大ヒットを記録した『天使にラブ・ソングを…』。第2弾では、高校で社会奉仕をすることになったシスターたちが、悪ガキたちにお手上げ状態となり、ラスベガスで二流スターとして活躍するデロリスに助けを求めることに。
本作で、シスターたちを悩ませるヤンチャな高校生の1人、リタを演じたのがローリン・ヒル。最初こそ音楽に興味を示さないものの、見事な歌声を披露して、ウーピー演じるデロリスだけでなく、観客も感激させた。
■音楽界ではレジェンドR&B歌手に
それもそのはず、幼い頃から教会で歌っていたローリンは、高校生だった1988年に、ワイクリフ・ジョンとプラズと共に、ラップ・ユニット「フージーズ」を結成。映画の公開と同年にコロムビア・レコード傘下のレーベルRuffhouse Recordsと契約を結び、翌年『ブランテッド・オン・リアリティ』でアルバムデビューを果たした。1996年にリリースしたセカンドアルバム『ザ・スコア』は全米アルバム・チャート1位を記録し、グラミー賞2部門を受賞した。
その後、1997年に第1子を妊娠したのを機にソロ活動を開始し、翌1998年にソロアルバム『ミスエデュケーション』を発表。このアルバムは、現在までに全世界で約2000万枚を売り上げ、日本でもミリオン・セラーを記録。グラミー賞では11部門にノミネートされ、年間最優秀アルバム賞や最優秀新人賞を含む5部門(当時女性としては史上最多記録)を制覇した。音楽史に名を残す名盤と称えられ、シングル「エックス・ファクター」はドレイクやカーディ・Bの楽曲でサンプリングされているほか、リアーナやアデルもインスパイアされたと語るなど、今も音楽シーンに影響を与え続けている。
プライベートでは、ボブ・マーリーの息子で元フットボール選手のローアン・マーリーとの間に5人の子どもを出産。娘のシーラ・マーリーはモデルとして活躍している。2011年にローアンと破局した後、第6子となる男の子を出産。この子の父親は明かされていない。
■トラブルを乗り越えて…
華々しい活躍の影で、トラブルにも見舞われた。『ミスエデュケーション』をリリース後、ローリンはコラボレーターから正当な評価を受けていないと訴訟を起こされる。2021年のローリングストーン誌のインタビューでこの時を振り返り、「私が得たものに貢献した誰かから非難され、凄まじいほどの嫉妬と対抗心に晒されていた。それによって消耗したりフラストレーションを抱えた状況からは、怒りに満ちた音楽しか生まれ得ない」と語っている。
3年かけてこのコラボレーターたちと和解した後、2002年に『MTVアンプラグド』をリリース。これ以降は、コンサートや楽曲の発表を不定期に行ってはいたものの、ミュージック・シーンの表舞台から遠ざかった。2012年には、脱税の罪に問われ、3ヵ月間にわたって収監されたことも。
しかし昨年、フージーズが2006年以来15年ぶりに再結成。ニューヨークで開催されたグローバル・シチズンのコンサートに登場したほか、『The Score』の25周年を記念したリユニオン・ツアーを行った。またローリンは、ナズのアルバム『King’s Disease II』に収録された楽曲「Nobody」に参加し、この楽曲の中で「全ての時間を自分の自由のためにフォーカスしている/彼らを打ち破ることが出来ると分かっているのに、同じ土俵に立つ理由はある?」と歌い、レコード産業と距離を置いていることと、競争からの解放を個人的な勝利と表現した。最近は、『ミスエデュケーション』の発売25周年を祝して、来年のツアー開催を示唆し注目を集めた。長い時を経て、彼女がまた表舞台に立つ時は近いかもしれない。(文・寺井多恵)
映画『天使にラブ・ソングを2』は、日本テレビ系『金曜ロードショー』にて今夜21時放送(放送枠5分拡大)。