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妻夫木聡、“さわやか笑顔”から“ダークなかげり”まで 演技派俳優が見せる新たな顔

ドラマ

◆『悪人』『怒り』など李相日監督とのタッグで新境地

 一方で、人気爆発の最中に出演した、犬童一心監督の映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)では、初めてのベッドシーンにも挑戦。それまでの好感度の高い青年という役柄から一転して、“今どき”で悪気はないが軽いノリの大学生を体現し、俳優として新たな一面ものぞかせた。ちなみに本作では、第77回キネマ旬報ベスト・テン最優秀主演男優賞や報知映画賞、ヨコハマ映画祭などの主演男優賞なども獲得している。妻夫木にとって、今作は大きな転機となった作品といえるだろう。

 2009年にはNHK大河ドラマ『天地人』で、大河ドラマ初出演にして初主演を果たす。「俳優を始めて最初に目標にしたのが、大河ドラマへの出演」だったという妻夫木は、本作で直江兼続の青年時代から60歳で亡くなるまでの生涯を演じた。兼続の幼年時代を演じた加藤清史郎が言う「わしはこんなとこ、来とうなかった」が新語・流行語大賞にノミネートされるなど、大きな話題を呼び、最高視聴率26.0%、平均視聴率21.2%を記録した。(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)

 さらにその翌年の2010年には、吉田修一の長編小説を李相日監督が映画化した『悪人』に主演。今作では、殺人を犯した土木作業員の清水祐一を熱演し、俳優としての評価を不動のものにした。妻夫木本人が出演を熱望したというほどに想いを込めて演じた本作だが、同じく、李監督と再びタッグを組んだ『怒り』(2016年)のインタビューで、妻夫木は「考える自分を捨てていって、自分がその役、その人になればいいという思いになっていった」と『悪人』の撮影時を振り返っている。かつての「さわやかな好青年」という役柄だけでなく、幅広い役柄を見事に演じ切る姿は多くの人の心を震わせた。本作では、第34回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞も受賞。今作も、妻夫木にとっては俳優人生を大きく動かす一作だったに違いない。

 ちなみに、『怒り』では、ゲイカップルの相手役を務めた綾野剛と物語さながらの同居生活を送ったことでも知られている。さらには「撮影に入る3ヵ月前くらいから、ゲイ友達役のみんなとご飯を食べたり、(新宿)2丁目に行ったりを繰り返してました。ホテルを借りて、音楽を流して疑似パーティをやって、みんなでジャグジーに入ったり」と徹底した役作りを行ない、その役の人生を生きた演技は、第40回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞するなど高い評価を得ている。

 また、2022年に公開された映画『ある男』では、依頼者から亡くなった夫の身許調査を頼まれる弁護士の城戸役を演じた。今作では、信頼の厚い弁護士役を落ち着いた演技で見せ、物語を進行していく。年齢を重ねたからこその重厚な演技が見ものだ。

 こうしてみると、妻夫木は、笑顔が似合う好青年からダークなかげりのある人物まで、実に幅広い役柄に次々と挑戦してきたことが分かる。そして、近年ではその芝居はさらに深みを増し、優しいお兄ちゃんも影のある男も説得力ある人物として見せてくれる。8日から放送される『Get Ready!』では、どんな新たな顔を見せてくれるのか、期待しながら放送を待ちたい。(文:嶋田真己)
 
 日曜劇場『Get Ready!』は、TBS系にて毎週日曜21時放送(初回25分拡大)。


<参考>
https://www2.nhk.or.jp/archives/jinbutsu/detail.cgi?das_id=D0009070712_00000
https://www.crank-in.net/interview/45503/1

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