全員ハマり役だった『あなたがしてくれなくても』 視聴者を引き込んだキャストの好演
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みちの会社の後輩、北原華も忘れてはならない存在だ。演じたのは武田玲奈。前半こそ、誠のことを「ニーニャ様♪」と呼び、隙あらば「わたしが落としに行きます!」と獲物を狙う目をしていたが、みちと誠が“本気で”好き合っていると知るや、応援に回った。仕事は決してできるように見えないのだが、最初から、みちの私生活のあれこれを目ざとくかぎつける嗅覚の鋭さを随所に発揮していた。
さらに、「先輩がこれから進む道はいばらの道です」「先輩ひとりだけが被害者なんですかね」と幾度も金言を繰り出し、みちに影響を与えてきた。華だけが、明るく、爽やかな色と風をまといながら、同時に、しっかりこの作品に溶け込んでいる。後輩ながらみちをサポートし、人生訓を吐く姿が様になる(何気にスタイルも素晴らしい)。この難しい芸当を、武田がサラリとやってのけ、非常に印象に残るキャラクターにしてみせた。
◆MEGUMI演じる編集長は、短い出演シーンでも納得の存在感
楓が心血を注ぐファッション誌「GINGER」の編集長として君臨している女性・川上圭子を演じているMEGUMIもまた、強い印象を残した。みちにとっての華ではないが、楓にとっても、近くに圭子編集長がいてくれて本当によかったと言える存在だったが、同時にあまりに大きな存在ゆえに楓にとってプレッシャーにもなっていたかもしれない。
圭子はチラッチラッとしか登場しないのだが、それでも仕事ができ、また人が付いていきたくなる大きな人物なのだろうと納得できる空気を、MEGUMIはしっかりと醸し出した。楓はスタッフの心身の変化に気付けるか分からないが、圭子は楓の変化に気付いた。あの低めの穏やかな声で、「楓はさ、きれいな顔して昔から泥臭いところあるから、何でも頑張って、頑張りすぎて」なんて声を掛けてもらったら泣くのも当然。会社を辞めて独立後もついていくスタッフがいるかもしれないと、勝手に想像してしまう。出ている時間は少ないのに、あれだけの存在感を与えたのはやはりMEGUMIだからだ。
◆毎回、タイトルの意味も考えさせられる作品だった
ついに、最終回を迎える本作。ハルノ晴による原作も厚い支持を集めているが、ドラマはドラマで、実際に彼らが、悩み、生活しているかのような錯覚すらしてしまう、人が演じることの意味を感じさせる、リアリティを伴った作品となった。2組の夫婦の話であったと同時に、4人ひとりひとりの物語であった本作。登場人物に、自分を誰かを、重ねて見ていた人も多いだろう。また、毎回、浮かび上がる「あなたが」と「してくれなくても」の間にあえて置かれたような“スペース”を含めたタイトルの意味。その意味を考えさせられることになった、時間そのものにも意味があったように思う。全員がハマり役だったからこそ、すべての役に愛着が湧いている。楽しみと怖さを感じながら最終回の放送を待ちたい。(文:望月ふみ)
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』最終回は、フジテレビ系にて今夜22日22時放送。