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【2024年秋ドラマ】『3000万』“連続ドラマの醍醐味”を体感する傑作

ドラマ

■人間味あふれるキャラクターがストーリーを動かす

 主人公の祐子(安達祐実)は、我慢を強いられる生活から抜け出したい思いから、夫の義光(青木崇高)と共に3000万を自分たちのものにしようとする。しかし犯罪グループに脅されて犯罪の片棒を担がされると、今度は息子の純一(味元耀大)を守るために捕まりたくないと主張する。彼女の行動だけ見ると身勝手にも思えるが、非常に人間的だともいえ、“家族を守るため”という切迫した思いが伝わってくる。はじめは弱々しかった彼女が後半に進むにつれ、どんどんタフになっていく姿に心をつかまれた。

 犯罪グループの指示役・坂本(木原勝利)もまた“悪人”としてだけの描かれ方はされていない。普段他人から金品を奪う犯罪を犯しておきながら、末次(内田健司)が長田(萩原護)を装った電話にあっさりだまされ、助けに行こうとして逮捕される。意外と人情派だったのだ。怒りをコントロールするため、自らアンガーマネジメントの講習を受けている姿からも、人間らしい弱さが見えた。

 すべての始まりである3000万を奪った実行犯のソラ(森田想)もまた犯罪者ではあるのだが、愛すべきキャラだった。蒲池(加治将樹)をフライパンで殴って湖に沈め(故意ではないが)、最終話では穂波悦子(清水美砂)をためらうことなく殴る一面もありながら、純一と2人で話すシーンで見せた柔らかな表情は、まるで親戚のお姉さんと話しているようだった。最後に、奪った金を持ち主の元に返しに行く姿など、彼女の根底には優しさが流れていたように思う。

 ドラマを見ていて、作り手がストーリーのためにキャラクターを動かしていると感じると冷めてしまうことがあるが、本作ではそういうことが一切なく、むしろ人間臭いキャラクターたちがストーリーを動かし、先の読めない展開を作り上げていた。

 主演の安達祐実は放送がスタートする前、本作について「こんなに面白いドラマが作れてしまった、どうしよう!!!という心境です」とインスタグラムにつづっていたが、この言葉には納得だ。『3000万』は、毎週の放送を心待ちにする楽しみを改めて実感させてくれた。このような心揺さぶられるドラマにまた会いたい。(文:堀タツヤ)

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