【レビュー】『Broken Rage』北野武×ビートたけし、ここにあり 壮大な実験の一部になれる新鮮映画体験

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北野武監督最新作『Broken Rage』の配信が開始されている。SNSで感想を検索すると、「最高だった!」と「なんだこれは!」が本当に同じくらいヒットする。挑戦的すぎる本作で北野監督が行った壮大で滑稽な“実験”について考えてみたい。
【写真】浅野忠信が全力変顔?! 笑いに挑む豪華俳優陣とらえたカット
「暴力映画におけるお笑い」をテーマとし、日本の配信映画として初めてベネチア国際映画祭に正式出品され高い評価を受けた本作は、北野監督が映画の常識を覆すべく手掛けた作品。
約60分の本作の前半では、警察にとらわれた“すご腕”殺し屋・ねずみ(ビートたけし)が、釈放を条件に刑事・井上(浅野忠信)と福田(大森南朋)と手を組み、覆面捜査官として裏社会に潜入する骨太のクライムアクションを描き、後半は前半と同じ物語がセルフパロディーという手法を使ってコメディータッチで描かれる。
これまで、日本の「笑い」に革命を起こしてきたビートたけし、そして映画界に数々の名作を生み出してきた北野武監督は、御年78歳。筆者は監督の半分も生きていない、そしてビートたけしの笑いをリアルタイムでほとんど味わったことのない世代ではあるのだが、本作後半で大いに笑ったし、北野武という男がおそらく、とても欲張りなんだろうということを察した。
本作はいわば壮大なコントといってもいい。前半と後半でまったく様相が異なる本作のレビューは、面白いように真っ二つ。北野監督はそこまで見越していたのではと言う気もする。この映画を見た我々が感想をつぶやくところまでが、『Broken Rage』なのかもしれない。
■豪華すぎる俳優陣が笑いにもがく姿を堪能
本作は約1時間という中編ながら、北野の他作品に負けず劣らず実力派俳優陣がそろう。
中でもやはり光っているのは、刑事を演じた浅野忠信と大森南朋のコンビだろう。北野映画では『首』で北野演じる豊臣秀吉の側近として控え、「トリオ芸」とも言うべき掛け合いを披露したことも記憶に新しい。この2人が再び北野映画に参戦し、ガンガン笑いをとっていく姿は緊張感がありつつも爽快だ。
Amazon Original映画『Broken Rage』場面写真(C)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
大森は、本作での“笑い”についてインタビューで「居酒屋で人を笑わせるのとはわけが違いますので。しかもお笑い将軍のような北野武さんの前でやるわけですからね。僕らはたけしさんの番組を見てきたので、台本からどういうことをやりたいのかを読み取ろうとするのですが、プロの芸人ではないので、かなり悩みました」(※1)と、難しさを語っている。
一方で浅野は現場での北野について「ずっと現場では北野武監督としているのですが、急にビートたけしさんになるんですよ。『あれ、いままでの北野武監督はどこに行っちゃったんだ』って。でも本当に近くでたけしさんのコミカルな芝居を見られるなんて、本当にラッキーです」と明かす。北野武とビートたけしそれぞれの面を堪能できる本作だが、それは出演陣にとっても同じだったようだ。