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【レビュー】『Broken Rage』北野武×ビートたけし、ここにあり 壮大な実験の一部になれる新鮮映画体験

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北野武

浅野忠信

大森南朋

■世界のキタノが一番頑張っていた

 本作の主人公、ねずみを演じるのは監督・北野武である。いやビートたけしというべきか。前述した俳優陣に加え、錦鯉の長谷川雅紀や空気階段の鈴木もぐらといったお笑い賞レース王者たちも出演している本作だが、最もアグレッシブに笑いをとりに行っているのはやはり北野だったと感じる。ちなみに筆者は、北野の「コマネチ」を本人がやっているところを本作で初めて観て、ある種の感動を覚えた。

Amazon Original映画『Broken Rage』場面写真(C)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
 78歳。世間的に言えばしっかりと「おじいちゃん」な年齢である北野は、それすら笑いのネタにする。階段を登れば足が上がらず躓く。走れば息が切れる。コメディパートとはいえ、老人が1人寂しくボロアパートで暮らす姿には物悲しさが漂いかけるが、漂い切る前に台所から大出火していたりする。本作で北野は、自らの老いをまっすぐに滑稽なものとしてとらえつつ、人生すらコメディだと笑い飛ばして見せた。

 かと思えば、背丈を超える大きさの本棚の下敷きになるわ、ルームランナーのスピードを上げすぎてずっこけるわ、ちょっと心配になるような体を張った笑いにもかかんに挑む。この人はまだ売れようとしているのか…思わず笑いながらもごくりと生唾を飲み込んでしまう。と同時に、芸人・ビートたけしの笑いをまだまだ観られそうな未来への予感に安堵(あんど)させられるのだ。

■映画のセオリーも自身のイメージも「Broken」した北野武

 『Broken Rage』というタイトルからは、嫌でも北野武の人気シリーズ『アウトレイジ』が連想される。前半のノワール感もそれを意識してのものかもしれない。しかし北野は今回、自身についたイメージを自ら壊しにかかった。というより、そのイメージを「利用した」と言った方が正しいだろうか。本作を観て笑った人も、「さすがは北野武…」と感心した人も、「なんだこれは!」と怒った人も、すべては北野の掌の上。北野は本作について「実験的映画」であると語っているが、我々視聴者もこの壮大でくだらない北野の“実験”の一部にいつのまにか組み込まれている。そんな不思議な体験をさせてくれた本作は、間違いなく“面白かった”といえるだろう。

 Amazon Original映画『Broken Rage』は、Prime Videoにて世界独占配信中。(文:小島萌寧)

※1 浅野忠信&大森南朋、“お笑い将軍”を前に挑んだ全力コメディ 「光栄」も、「かなり悩みました」 クランクイン!
https://www.crank-in.net/interview/161581/1(参照 2025‐2‐21)

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