停滞気味のジョニデ復活か? 実在のマフィアを怪演、オスカー候補入りの声

ハリウッドの人気スター、ジョニー・デップ復活なるか? ここのところヒット作に恵まれず、キャリアが停滞気味だったデップだが、最新作『ブラック・スキャンダル』(日本公開:2016年1月30日)での名演ぶりに、業界では期待の声がささやかれている。
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『ブラック・スキャンダル』は実在のマフィア、ジェイムズ・“ホワイティ”・バルジャーを描く犯罪ドラマ。役ごとに外見をがらりと変えてみせるのはデップが得意とするところだが、髪を薄くし、特殊メイクで顔の骨格も変えて登場する今回の彼は、見るだけでも怖い。
しかし、バルジャーには家族思いで情に厚い側面もある。そんな層の深いキャラクターを演じきってみせたデップに、有力業界紙は「キャリア最高の演技」と賞賛を送り、オスカー候補入りの可能性も強いと見られている。デップ自身も、今作を監督したスコット・クーパーに対して、「キャリアのテコ入れをしてくれてありがとう」とコメントをしているほどだ。
長年、むしろ通好みの個性派俳優だったデップは、2003年の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』の爆発的ヒットで、一気に一般からの人気を得た。同作品では、キャリア初のオスカー候補入りも果たし、翌年は『ネバーランド』、2007年には『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』でもノミネートされ、名実共にトップスターとなる。
ところが、2013年の『ローン・レンジャー』は、2億ドル以上の予算をかけたにも関わらず、北米興収は8900万ドルにとどまり、1億ドルの予算をかけた翌年の『トランセンデンス』の北米興収はわずか2300万ドル。昨年の『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』はさらにひどく9位デビューで、北米興収はなんと700万ドル止まりだった。これらの作品に対する批評家の感想も冷たい。
しかし、デップ本人は昔と変わらず興行成績をまったく気にしていない。クーパー監督が「キャリアのテコ入れをしてくれた」というのも、興行成績や批評家受けについて言ったのではなく、「キャラクターのために必要なところにたどり着くことができたし、クリエイティブで大胆な監督と仕事をして、その人の目的に貢献することができたと感じることができたから」と本人は説明している。
残酷でダークな『ブラック・スキャンダル』の興行成績がどこまで行くかはわからない。しかし、演技の実力をあらためて証明してみせたという意味において、今作が彼のキャリアに良いはずみをつけるのは、間違いなさそうだ。(文:猿渡由紀)