俳優・高橋一生、演出家も一目置く“俳優”としての感覚 『いつ恋』『民王』の存在感
舞台俳優としての実力を「山本耕史など、実力派子役が努めてきた『レ・ミゼラブル』のガブローシュも演じ、歌も演技もできる人」と教えてくれたのは、「アクチュール・ステージ」の川村夕祈子編集長。「昨今の舞台では主に主演で、不条理劇や難解な題材、重厚な物語にも気圧されない存在感や説得力がある俳優さん。印象的なのは、伝説的な劇団・第三舞台の最後の公演『深呼吸する惑星』に、当時のメンバーや出演者以外で、唯一の若手俳優としてキャスティングされたこと。これほどの特別な作品に起用されるのは、この人は間違いないという安心感や、何かやってくれるだろうという期待感からではないでしょうか」と分析。
さらに「海外の戯曲などもよく読んでいて勉強熱心、演出家とも共通言語をもって会話や議論もしているようで、しかし理屈に頼らず、その時々の感覚を大事にしている、と以前取材で聞きました。狂気を孕んだ役でも奇異には映らず、宮藤官九郎のドラマなどでは軽妙かつチャーミングな役が多いのも更に魅力的です」。
手練れた演技スキルやテクニックに頼らず、感覚を大切にする柔軟性と探求心。天才肌でありながら努力家でもある。ゆえにどんな役柄でも新鮮に映るのであろう。年を重ねるごとにさまざまな魅力を纏い、今後、円熟した演技を見せてくれる役者であることは間違いない。(取材・文:小竹亜紀)