ドン底から蘇るヒーロー『ドクター・ストレンジ』、注目はカンバーバッチと驚異の映像

マーベル・スタジオが贈る最新映画『ドクター・ストレンジ』がいよいよ本日から公開となった。マーベルファンの一人として大きな期待を抱きながら早速鑑賞。まずは、「カンバーバッチさん、あなた最高です!」と言いたい。気難しくて傲慢な男が人生のドン底から這いあがる姿はドラマチックで、上質なエンターテインメント作品として仕上がっている。
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ファンの間では“マーベル・イヤー”とまで言われている2017年の初陣を飾る『ドクター・ストレンジ』。主人公の外科医スティーヴン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、突然の交通事故により、これまで多くの人の命を救ってきた“神の手”を失ってしまう。動かなくなってしまった手をなんとか直そうと必死に治療するが、その手は完治することなく財産を使い果たしてしまう。唯一気にかけてくれる同僚の救急医クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)にすら当たり散らしてしまい、まさに人生の“ドン底”に…。そんな彼を蘇らせたのは“魔術”の力だった。指導者エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)のもと、過酷な修行をかさね人智を超えた力を手にしたストレンジだったが、世界を破滅へと導く闇の魔術の存在を知ったとき、彼は壮絶な魔術の戦いに巻きこまれてゆく。
本作のプロデューサーのケヴィン・ファイギは当初の予定を大幅に変更し、「ベネディクトしかいない」と、スケジュールの空きを待って撮影に臨んだというが、その意味がよくわかった。カンバーバッチのハマりっぷりがすごい。傲慢ゆえに孤独だったストレンジの繊細さから、何もかも失いボロボロになっていく姿、ヒーロー然とスタイリッシュにマントを羽織る姿まで、1役とは思えないほど多様な人間性を表現しなければいけないストレンジ役だが、カンバーバッチの神髄ともいえるバリエーションに富んだエモーショナルな演技は、観ている人に一切付け入る隙をあたえない、むしろ感嘆させられる。見てくれがパーフェクトないわゆるイケメンや、鍛え上げた体がご自慢の俳優が巨万といるハリウッドの中で、ベネディクトに託した審美眼は鋭く、恐れ入る。