なぜ磯村勇斗は、こんなにも“ワル”が似合うのか 『今日俺』『東リベ』過去作からひも解く
テレビドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)や、映画『東京リベンジャーズ』など、磯村勇斗は、どうしてこんなにも“ワル”が似合うのだろう。役に入っていない時の彼は、かわいらしい笑顔が印象的なだけに、謎が深まるばかりだ。さまざまなタイプの“ワル”を巧みに演じ切る俳優・磯村勇斗の魅力を振り返ってみたい。
【写真】かわいらしい笑顔が印象的な磯村勇斗
■同クールで異なる“ワル”を演じ分け
そもそも、磯村がブレイクを果たすきっかけとなったのは、2017年放送の朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)で、ヒロイン谷田部みね子(有村架純)の相手役を好演したことにある。同作で演じた“ヒデ”こと前田秀俊は、不器用で恋愛に奥手。仕事熱心で絵に描いたような好青年だった。つまり、“ワル”のイメージは皆無だったというわけだ。
では、“ワル”のイメージがついたのはいつからだろう…と考えた時に、思い浮かんだのが、テレビドラマ『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)と、『今日から俺は!!』である。両作とも2018年10月クールに放送され、演じたのはどちらもダークサイドな役柄。同じクール内で、異なる“ワル”を演じ分けていたのだ。
まず、『SUITS/スーツ』で演じたのは、経歴詐称の弁護士・鈴木大貴<大輔>(中島裕翔)の悪友・谷元遊星。人並み外れた記憶力を持つ大輔を裏稼業に誘い、違法行為を続けている遊星は、大輔が上手くいきそうになると必ずと言っていいほど足を引っ張るトラブルメーカーだった。しかし遊星は、やっていることは悪いのだが、生粋の“ワル”ではない。強いのではなく、弱いからこそ悪の道に手を染めてしまう…という葛藤を表現しなければならなかった。そこで磯村は、難度の高いキャラクターを見事に演じきり、遊星をどこか憎めないキャラクターへと昇華させた。
その一方、『今日から俺は!!』の相良猛は、卑劣で非道な手を使う生粋の“ワル”。ビジュアルも、眉毛を染めて銀髪リーゼントで挑んだ。腰をかがめて、首を前に出した立ち方や、常に眉を寄せている“ワル”な表情。原作の“狂犬相良”が、そのまま飛び出してきたかのような極悪演技を見せた。ヤンキーを演じる上で欠かせないのが、アクションスキルだが、『仮面ライダーゴースト』(テレビ朝日系)で基礎を固めている彼からすれば、得意分野なのだろう。映画『今日から俺は!!劇場版』(2020)で見せた柳楽優弥とのアクションシーンは、臨場感があり惹(ひ)きつけられた。ドラマ版とはまた違う相良の魅力が見られるので、ぜひ8日放送の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)でチェックしてほしい。