中国ドラマも恋愛は女性がリード!? 『花の都に虎われて』からひも解くラブストーリーの新しいトレンド
中国時代劇ドラマ『花の都に虎(とら)われて~The Romance of Tiger and Rose~』は、Webドラマ視聴再生指数ランキングで3週連続1位を記録、2020年のテンセントビデオ星光大賞では国内の視聴者が選ぶドラマ・オブ・ザ・イヤーだけでなく、海外の視聴者が選ぶドラマ・オブ・ザ・イヤーも受賞した話題作だ。それほどまでに多くの視聴者を惹きつけた本作に見る中国ドラマの新しい魅力とは? 日本ドラマや韓国ドラマにも共通するラブストーリーの新しいトレンドに今回は注目してみたい。
【写真】日本でも注目度上昇中! 『花の都に虎(とら)われて』ヒロイン役チャオ・ルースー
■ ドラマの新しいトレンドは女性主導のラブストーリー
理想の王子様の出現をひたすら待ち続ける女子を指す“白馬の王子様症候群”という言葉が取りざたされる昨今、そのアンチテーゼというべき、王子様をただ待つだけではない女性主導のラブストーリーが注目されはじめている。例えば、今年の夏にフジテレビ系で放送されたドラマ『推しの王子様』では乙女ゲームを手がけるベンチャー企業の女性社長がまっさらな若者を一人前に育てあげて大切な愛を手にいれ、韓国ドラマ『梨泰院クラス』ではヒロインが愛する男性の事業のパートナーとなり彼を自分に振り向かせるため長期戦の恋を繰り広げる。
こうしたドラマと同じく『花の都に虎(とら)われて』も女性主導でラブストーリーが展開。時代劇ドラマを執筆中の女性脚本家が自分の書いたシナリオの世界に入り込み、実際に登場人物の1人となってラブストーリーをリードしていくのだ。そんな破天荒な物語世界は面白くて痛快。『推しの王子様』や『梨泰院クラス』と同じく、受け身ではなく積極的に真正面から恋愛に取り組むヒロインにエールを送りたくなる。
■ 時代劇ドラマなのに女性優位という“イマドキ”設定
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しかも、『花の都に虎(とら)われて』に登場する時代劇世界は女性優位という諷刺のきいた設定。舞台となる花垣城は女性が治めていて、社会的地位の高い仕事は全て女性が担い、男性は能力があっても日陰の存在という社会だ。そんな花垣城に政略結婚で婿入りすることになったのが、男性優位の玄虎城からやってきた若様。当初、彼は城主の次女と結婚するはずだったが、輿入れの途中で出会った三女が彼を気に入って略奪婚! 本来のシナリオではこの三女は殺され、若様は次女と恋に落ちるはずだったのが、物語の創造主である脚本家が三女のキャラに転移したことをきっかけに、ストーリーはどんどん違う方向へ…。
恋愛経験ゼロだった脚本家がドラマの世界で思いがけず若様と素敵な恋愛を体験することになり、リアリティのなかった当初のシナリオがトキメキ満載のロマンスへと変わっていく。「どう物語が展開していくのか」次が気になるストーリー作りがしっかりしており、海外からの評価が高いのにも納得だ。
■ 共感を呼ぶ現代的な自立したヒロイン像と恋愛観
もちろん、女性がラブストーリーをリードするといっても、ヒロインがただ思い通りに恋愛を進めていくだけのストーリーでは観る人の心を掴むことはできない。ヒロインも相応の努力をして相手と対等な関係を結び、互いに支え合えるカップルとなってはじめて視聴者の支持が得られるのだ。『花の都に虎(とら)われて』もヒロインが慣れない時代劇の世界で努力を重ね、七転び八起きで愛のために奮闘し、社会を男女平等に変えていく姿が多くの女性たちの共感を呼んだ。
つまり、時代劇ラブコメというジャンルの枠にとどまらない、普遍的で現代的な観点のラブストーリーが従来の作品とは一線を画す見どころとなっているのだ。このように、今ではラブストーリーのテーマもどんどん進化を遂げている中国ドラマ。本作を見ると現地での人気だけでなく、近年、世界でも評価を高めてファンを増やしている中国ドラマの新しい魅力を実感することができる。
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