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『エルヴィス』で神がかった演技 オースティン・バトラー、3年にわたる役作りで内側からなりきる

映画

■ムーブメント・コーチと二人三脚でエルヴィスの領域に!

 『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックのムーブメント・コーチを担当し、見事ラミにオスカーをもたらしたポリー・ベネットが、幸運にもオースティンのサポートに付いた。準備期間を入れると約3年、オースティンはエルヴィスまみれになる。「もともと自分はシンガーでもダンサーでもなかったし、その上でエルヴィスを演じなければならなかったので責任重大だったね。まず、時間があれば、ポリーさんと二人でエルヴィスの存在する全ての映像を観て吸収したし、取材やインタビューも全部目を通して、喋り方や手の動き方とかを細かく分析もした。ただ大切なのは、計算と自然体、その両方のバランスなんだよね」とオースティンは振り返る。

映画『エルヴィス』より (C)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
 「つまり、綿密に計算しながら演じることと同時に、それがあたかも初めて起きているかのように振る舞わなければならないので、その両方をうまく合わせることが難しかった。全てエルヴィスの視点から表現しようと思っていたので、エルヴィス本人が体験したもの、彼が育ったビール・ストリートで見たもの、ゴスペルを歌う教会で彼が聴いたもの、感じたものを知ることに時間を割いたんだ。だから、彼を真似た振り付けは一切していない。音楽を聴いた瞬間、勝手に体が動いてしまうという状態に自分を持っていかなければならなかったので、とにかく、内側からエルヴィスを感じられるようになるまで、エルヴィスのことだけを考えて3年間を過ごしたんだ」。気が遠くなる役づくり。だが、確かにスクリーンには、オースティンの個性は鳴りを潜め、そこにはエルヴィスそのものが存在した。

■俳優として、常に自分が成長できる大きなチャレンジを探している

 ロックを生んだ世界的スーパースターなだけに、その重責から相当なプレッシャーがあったというオースティン。だが一方で、そんなチャレンジングな役を探している自分もいるという。「俳優として、アーティストとして、一番充実感を得られるときは、やはり自らの意志で大きな挑戦を受けて立ったときだね。だから僕は、自分が怖く思うもの、チャレンジングだと感じられるものを常に探している。自分にインスピレーションを与えてくれた演技体験は、自分を成長させてくれるからね。『マイ・レフトフット』のダニエル・デイ=ルイスだったり、『レイジング・ブル』のロバート・デ・ニーロだったり…。そういった意味では、今回のエルヴィス役は、どこか超人的に扱われていた彼から、全てのバイアスをはがし、“人間”エルヴィスを探す旅は、とても惹かれるものがあったよ」

写真:小川遼
 自身のキャリアを変えてしまうくらい何かを要求される役を常に求めているというオースティン。次回作の話をするのは早計だが、将来、どんな顔をいくつ見せてくれるのか、実に楽しみな俳優だ。(取材・文:坂田正樹 写真:小川遼)

 映画『エルヴィス』は公開中。

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