竹野内豊、不器用だからこそ「自分の心に嘘のないよう、ただ気持ちを大事に」演じたい
俳優デビュー以来、30年近くにわたり第一線での活躍を続ける竹野内豊。さまざまな作品で幅広い役どころに挑戦し続ける彼が今夏、初の配信作品に出演する。2011年に起きた東京電力福島第一原発事故を3つの視点から描くNetflixシリーズ『THE DAYS』で、あの日、あの場所で、懸命に職務と向き合った1・2号機当直長を演じる。「お芝居と言っても、本当に苦しかった」という撮影中に感じたこと、本作を通じて届けたい思いなどを、真摯な言葉で語ってくれた。
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◆立ち入り禁止区域に足を運び感じた「責任感」
ジャーナリスト・門田隆将が福島第一原発事故の関係者を取材したノンフィクションなどに基づく本作は、3つの異なる視点から事故を克明に捉えた重層的なドラマ。入念なリサーチにより、政府、会社組織、そして現場で命を懸ける者たち、それぞれの視点からあの日、あの場所で、本当は何が起こっていたのかを描き、緊迫の7日間の真実に迫る。
Netflixシリーズ『THE DAYS』場面写真
忖度や誇張を排除したリアリズムが息づく本作について、「脚本を読んだ時から感情が揺さぶられましたが、実際に撮影現場で演じる役者さんたちそれぞれが作り出すあの場の空気感はとても切迫したものがあって、演技とはいえ、自分自身に何度問いかけても答えが見つからない、そんな苦しい場面もありました」と振り返る。
撮影を終えた今でも、本作について語ることは難しいようで、「今回、はたして作品と言っていいものなのか考えさせられる」と心境を吐露。「事実に基づく題材なだけに、できるかぎり心に嘘がないように。撮影中に湧き上がる真実の瞬間のようなものを、逃さないように大事にしていました」と、作品に臨んだ思いを語る。
撮影の前には、立ち入り禁止区域をロケバスで走り、実際に原発まで足を運んだそう。
「立ち入り禁止区域内から原発へ向かう道中というのは、12年の月日が経ったとはいえ、あの当時のまま手つかずで時間が止まっていて。頭の中では理解できていたんですけど、やはり実際にあの光景を見た時は、なんとも言葉にできない気持ちで衝撃的でした」。
また、「ニュースや、さまざまなメディアでの情報ではとても知りえなかった生々しさ、たとえようのない空気」も感じた。「家屋にはうっそうと木が生い茂っていて、当然、自分の家も、自分が生きてきた全ての思い出の品も手放さなければならなかったわけですよね。あそこに行ったことで、そういう人々の残された思いを感じることができましたし、よりいっそうこの題材に挑む責任の重さみたいなものを感じました」と述懐する。
Netflixシリーズ『THE DAYS』場面写真
福島第一原発の吉田所長を演じた役所広司をはじめ、小林薫、六平直政、音尾琢真、小日向文世らベテランぞろいの撮影現場には「ほかにはない独特な緊張感」があった。「今まで他の撮影では味わったことがない独特な緊迫感がありました。それは、やはりこの映像をしっかりと世に届けなくてはいけないという皆さんひとり一人の責任や使命感、そのようなものが、脚本に描かれていたからだと思います」。
「当直長として苦しい決断を下さなければいけないシーン」が特に印象に残ったとも告白。「吉田所長からの苦渋の決断を受け、国民の安全を守るために、当然、職員に指示を下さなければならないというのは、頭の中では理解できていても、命がけの作業に向かわせることが本当に正解かどうか、自分自身に何度問いかけても難しい判断だと感じました。当直長としてではなく、1人の人間としてなんとも言えない感情になりましたね」と、さまざまな思いにとらわれながら役に向き合った。