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『スクラッパー』監督が語る“主演子役”のキュートな素顔 話を聞きたくない時は「補聴器をオフに(笑)」

映画

■犯罪に手を出す子どもたち…全ては生き残るため

リーガン:あれはローラがしていた補聴器でジョージーというキャラクターのために用意したものではありません。耳に障がいを持つローラにとって体の一部なので、特に説明もせずありのままの姿を映し出しました。ただ、私たちが何か細かいことを言っても、聞きたくない時には補聴器をオフにするので、これには困りました(笑)。

(C)Scrapper Films Limited, British Broadcasting Corporation and the The British Film Institute 2022
――12歳の少女が抱える喪失感がとてもリアルににじみ出ていたと思います。大人びているけれど、時折見せる子どもっぽさ…このコントラストに胸がしめつけられました。

リーガン:この映画を撮る2年前、両親や家、コミュニティーなどいろんなものを失った子どもたちの姿を捉えたドキュメンタリーを撮ったんですが、彼らと対峙(たいじ)した時に感じた喪失感をジョージーに反映させました。おっしゃるように、大人びてはいるけれど、まだ12歳の子ども。「自分で自分を成長させなければ生き残れない」という自立心がある反面、まだまだ魔法を信じる子どもでいたい、という気持ちもどこかにあるはず。天国の母親につながる秘密の部屋は、それを象徴する場所。唯一、ジョージーが自分の気持ちに正直にいられる場所なんです。

――イギリスには、このような生活を強いられている子どもたちが大勢いるのでしょうか?

リーガン:たくさんいると思います。親がいない子どももいますが、親がいてもその役割を放棄し、子どもの面倒をちゃんと見ていない、というケースもあります。ジョージーの場合、父親のジェイソンがいますが、その両方に当てはまります。ジョージーが生まれた当時、大人になりきれてなかったジェイソンは、親になる準備ができておらず、家族を置いて出て行ってしまった。その後、母親が病気で他界し、独りぼっちになってしまったジョージーは、生き延びるための手段を考えなければならないわけです。本作では、自転車を盗んで闇業者に売るという場面が描かれていますが、これは、あくまでもポジティブに描いたシーン。自転車泥棒は悪いことではありますが、状況が変われば立ち直れるチャンスがある…。なかには麻薬の売人になってしまう子もいますから。子どもたちがなんとか命をつなげようとして犯罪に手を染める…そこにはやむにやまれぬ生活苦があることも知っておいてほしいですね。

シャーロット・リーガン監督 (C)Scrapper Films Limited, British Broadcasting Corporation and the The British Film Institute 2022
 実体験を基に、かつてないアプローチでイギリスのワーキングクラスの本質に迫った映画『SCRAPPER/スクラッパー』。本作でついに長編映画監督デビューを飾ったリーガンは、「今後もっともっと映画に携わって、自分なりのメッセージを発信していけたら」と目を輝かせる。「夢は『オッペンハイマー』のような作品を作ること」。新たな才能のさらなる飛躍に大いに期待したい。

(取材・文:坂田正樹)

 映画『SCRAPPER/スクラッパー』は全国公開中。

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映画『SCRAPPER/スクラッパー』予告編

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