堂本剛、27年ぶり映画単独主演で新境地「久しぶりに主演でお芝居させてもらう役にしては難しすぎました(笑)」
劇中で沢田が描く「○」は、堂本自身の手によるもの。「最初に描く“○”が奇跡を起こさないといけなかったのでめちゃくちゃ緊張しました。適当に描かなきゃいけない“○”と、一心不乱に描く“○”、いろんな種類があったんですよね」。描くにあたっては“ゼロ練習”で臨んだ。「初めて左手で描くことに意味があったんです。現場で最初に描いた時には、自分でも驚いたんですけど、意外と上手く描けたんですよ(笑)。天才かと思って。もしかしたらこれをビジネスとして今後やっていってもいいかもしれないと一瞬思った」と笑顔を見せる。「一番緊張したのがモップで屋上に描く“○”。やったことないし、一発でやらないとダメだし。そのシーンの後はみんな興奮していました。すごくきれいに描けましたね!って。“○”を描いただけで人が喜ぶんだってすごく楽しかったですね。最終日には、“○”を描いてくださいってスタッフさんの行列もできたんですよ。冗談じゃなく、一生分の“○”を描きました(笑)」。
本作には、小林聡美や片桐はいりといった、荻上組ではおなじみの顔ぶれも出演。勝手なイメージだが、堂本との演技の親和性も高そうな2人だ。「お2人とも本当に優しくて。小林さんはテレビに出てらっしゃる印象そのまんまの方で。本当に気さくだし、柔らかいし、現場の人に気配りもされる人。こういう年のとり方を自分もしたいなって思うような方でしたね。片桐さんにもシールや和菓子のお土産をいただいたりと、優しく接してくださいました」。
映画『まる』場面写真 (C)2024 Asmik Ace, Inc.
堂本とドラマ『33分探偵』シリーズなどでタッグを組んだ福田雄一監督は、自身のエックスで「つよしくんの新しい一面をたっぷり堪能できます」と本作を評していた。そう伝えると、「そうなんですか? いつ観てくれたんやろ?」と驚きつつ、「どうなんでしょう。受け身の芝居っていうのをほとんどしてこなかったので、そういう意味では新しい一面があるかもしれないですね。自分自身はがっつり芝居するっていうのが久しぶりだったんで、分析しながらはやっていなかったんですけど…」と振り返った。
本作で堂本は「.ENDRECHERI./堂本剛」名義で映画音楽にも初挑戦している。「お話をいただいた段階では物語の全貌が見えていない時期で、僕の中では起承転結のはっきりした音楽を作るっていうイメージだったんです。でも脚本が上がってきたら、起承転結というよりは“荻上ワールド”。これは音楽を付けるのは至難の業だな」と感じたそう。「実際つないだ映像を観た時に、役者さんのお芝居の間がとても気持ちよかったんです。音楽を差し込む余地がほとんどなく、『これ音楽要りますかね?』とさえ言ってしまったくらい」と明かす。「今回の映画音楽は、音楽というよりか、芝居に近いくらいディープな役割だったなと思っています。頭では作れなかったので感覚的に、監督や現場の人と話して出来上がっていった音楽」と語る堂本。「通常の映画音楽よりもすごく難しい映画音楽をやったような印象ですね。だから次はもうちょっと気楽にできる映画音楽だったらいいなと思ってます」と、映画音楽への関心は継続中だ。
最後に、堂本にとって“○”とは? そう尋ねると「僕の中では、永遠、輪とかの意味合いが強い」との答えが。「物事を収めたりつなげたりする時に、重要な図形だなって思います。だから、脚本の中にある“○は世界を救う”っていうのはあながち嘘ではないなって思うし、人は○に吸い寄せられ、興味を掻き立てられるっていう深い潜在意識みたいなものもあると思う」ときっぱり。
また、「コロナ禍っていう時代を経験して、いまもなおそれは続いている。地球の人全体でコロナっていうものを意識したにも関わらず、丸くまとまらなかったですよね。これからもパンデミックはまた来るでしょうし、そうなった時にまた同じことを繰り返すのかなーって寂しくなったりもしましたね。おんなじところに戻ってしまうっていう、そんな○もある。深いですよね、○って」としみじみ。
「平和的な○が理想だけど、悲しい○もあるなって思ったり。だからそういう意味では、この『まる』という作品の中の登場人物や出来事が、いろんな人の胸を打つきっかけになるといいなと思ってます」とアピール。「でも1回で理解できるのかなとも思ってて。2回は観たほうがよさそうですよね。ぽかーんとなにげなく観ていると過ぎていっちゃうから。集中して観てほしいです」とメッセージを送る。
「今の自分の現在地は本当に納得しているものなのか、それを逃げずに考えてほしい。けっこう柔らかい映画ですけど、『逃げんなよ』と問いかける作品じゃないかと思ってるんです。荻上さんも現場では柔らかくしてますけど、芯はめちゃめちゃ強い人だし、たぶんそういうメッセージもある人だと思うんですよ。誰もが自分からは逃げられない。自分からは逃げずに向き合う力を与えてくれる作品になっていると僕は思います」。
久しぶりの映画の現場で、さまざまな「○」に真剣に向き合い、作品の世界観を作り上げた新しい堂本剛をぜひ劇場で体感してほしい。(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)
映画『まる』は、10月18日公開。